MAYHEM『ATAVISTIC BLACK DISORDER / KOMMANDO』(2021)
2021年7月9日にリリースされたMAYHEMの最新EP。日本盤は同年7月7日発売。
最新オリジナルアルバム『DAEMON』(2019年)に続く本作は、同アルバムからのアウトテイク3曲にメンバーが影響を受けたパンク/ハードコアバンドの楽曲カバー4曲に加えた異色の内容。ここ日本では今年2月にMAYHEM周りを題材にした映画『ロード・オブ・カオス』が公開されたばかりとあり(かつ、久しぶりの日本盤発売とあって)、手に取りやすい1枚ではないでしょうか。
現メンバーはネクロブッチャー(B)、ヘルハマー(Dr)の初期メンバーにアッティラ・シハー(Vo)、テロック(G)、グール(G)という5人。また、本作にはメシア、マニアックといった初期ボーカリストもゲスト参加しており、映画を観たばかりというビギナーにも訴えかけるものがあるはずです。
オリジナル曲3曲のうち、「Voces Ab Alta」のみ完全未発表。少なからずMAYHEAMの楽曲に触れたことがあるというリスナーなら、これらのオリジナル曲のリフワークやギターフレーズなどを耳にしたら「あ、MAYHEMだ」と感じるのかもしれません。それくらい“らしさ”の詰まった楽曲群といえるでしょう。『DAEMON』から漏れたのは同作のビジョンに合わなかったというだけで、決して完成度が劣っていたわけではない。そういう意味でも、これらの楽曲を改めて耳にできるのはありがたい限りです。
そして気になるカバー曲。取り上げたのはDISCHARGE「In Defense Of Our Future」、DEAD KENNEDYS「Hellnation」、RUDIMENTARY PENI「Only Death」、RAMONES「Commando」というMAYHEMの名前からはおよそ想像もできないバンドばかり。MAYHEMがデッケネやRAMONESをカバーするってどういうこと?と、聴く前はかなり不安でしたが……原曲の雰囲気を踏襲しつつ、要所要所にメタリックなアレンジが散りばめられており、許容の範囲として楽しむことができました。まあ、遊びの範疇としてはアリなのかな(さすがにオリジナル曲「Everlasting Dying Flame」からカバー曲「In Defense Of Our Future」への流れは唐突なので、新曲で構成されたM-1〜3をDISC 1、カバーで構成されたM-4〜7をDISC 2くらいの感覚で楽しめたらと)。
ボーカルワークに関しては、意外と普通に歌ってしまっている(笑)ので、何も知らずに聴いたらMAYHEMとは判別不能でしょうけどね。ちなみに「In Defense Of Our Future」にはメシア、「Hellnation」にはマニアックがそれぞれゲスト参加しているので、意識して聴いてみるのもいいかもしれません。
MAYHEMはこのコロナ禍、1996年以来という長い休暇期間に突入し、2022年には本格的再始動するそうなので、遅くても2023年までには『DAEMON』に続くオリジナルアルバムが届くのではないでしょうか。それまでのつなぎとしては、本作は十分すぎる1枚だと思います。
▼MAYHEM『ATAVISTIC BLACK DISORDER / KOMMANDO』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)
