KURT COBAIN『MONTAGE OF HECK: THE HOME RECORDINGS』(2015)
2015年11月13日にリリースされた、カート・コバーン(NIRVANA)のホームレコーディング・デモ音源集。
本作は2015年春に公開されたカートのドキュメンタリー映画『COBAIN:モンタージュ・オブ・ヘック』のサウンドトラック的位置付けの作品集。録音時期的には1987年から1994年までと幅広く、録音状態もまちまち。あくまでホームでもなので、過剰な期待をしないで接することをオススメします。
そもそも、本作に収録されている音源はカートが亡くならなければ、間違いなく世に出ることはなかったであろう習作ばかり。「Been A Son」や「Something In The Way」「Frances Farmer Will Have Her Revenge On Seattle」といった、のちにアルバムで完成版が収録されることになる楽曲のプロトタイプも収められているものの、大半はアコギでの弾き語りによる“サウンドメモ”のようなもの。「Reverb Experiment」みたいに“曲”とは言い難い断片や、「Montage Of Kurt」のようなサウンドコラージュも含まれており、カートの純粋なソロ作というよりも本当に映画のサウンドトラックとして制作されたものなんだな、というのが伝わる内容です。
いや、サウンドトラックなんて豪勢なものじゃないな。便所の落書きをまとめたら、こんなんできました……みたいなものか。芸術的価値は皆無。カート・コバーンという存在のすべてを知っておきたい、一部のコアマニアに向けた“おまけ”みたいなシロモノと断言させてください。
とはいえ、ビートルズ「And I Love Her」のダークなカバーが収められているなど特筆すべきポイントもあるんですよ(大半はマストで聴くべき音源とは言い難いものですが)。音楽ファン的には、本当にこれくらい。
映画用に目玉となるべき音源を漁ったものの、もはや残りカスのような音源しか残されていなかった、ということなんでしょう。NIRVANAらしいデモ音源は2004年発売のボックスセット『WITH THE LIGHTS OUT』で出し尽くした感がありますものね。NIRVANAというバンドにこだわるのであれば、『WITH THE LIGHTS OUT』だけで十分かと思います。
リリース当時は「カスみたいな作品だな」と思っていたWITH THE LIGHTS OUT』、本作を聴き終えたあとに久しぶりに再生してみたら、意外と良いじゃないか。いや、これは全然アリだ。と思えたのですから、そういう意識の変化を与えてくれたという意味では、この『MONTAGE OF HECK: THE HOME RECORDINGS』にも存在意義が少しはあったんだなと。そういう作品です(どういう作品だよ)。
カートの命日に、これをわざわざ聴くぐらいだったら、何万回とリピートしてきた「Smells Like Teen Spirit」を爆音で鳴らしてあげてください。きっとカートもそのほうが成仏するはずですから。
▼KURT COBAIN『MONTAGE OF HECK: THE HOME RECORDINGS』
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