TOMAHAWK『TONIC IMMOBILITY』(2021)
2021年3月26日にリリースされたTOMAHAWKの5thアルバム。日本盤(輸入盤国内仕様)は同年4月3日発売。
FAITH NO MOREやMR. BUNGLE、FANTOMAS、DEAD CROSSなど多方面で活躍するマイク・パットン(Vo, Key)がデュアン・デニソン(G/THE JESUS LIZARD、UNSEMBLE)、トレヴァー・ダン(B/MR. BUNGLE、FANTOMAS)、ジョン・ステニアー(Dr/BATTLES、ex. HELMET)とともに活動するオルタナティヴ・メタルバンド。同メンバーで初めて制作された前作『ODDFELLOWS』(2013年)から実に8年ぶりの新作となります。
共同プロデューサーにポール・アレンを迎えて制作された今作は、アヴァンギャルドなメタル/オルナタロックにフュージョンやプログロック的なプレイスタイルをミックスさせた、奇想天外なアレンジを楽しむことができる1枚。グランジ以降のザラついた質感と、ジョンが参加するBATTLES的な手法を取り入れたプレイスタイル、そこにFAITH NO MOREなどで培ったマイクの変態生が、不思議なバランス感で融合……すると、MR. BUNGLEやFANTOMASとも違う独特なヘヴィサウンドが完成するわけです。
パートナーが変わればここまで変わるのか……と毎回驚かされるマイク・パットン絡みの作品。昨年後半にはMR. BUNGLEがスラッシュメタル/クロスオーバーに回帰した21年ぶりの新作『THE RAGING WRATH OF THE EASTER BUNNY DEMO』(2020年)で我々を驚かせましたが、そちらが80年代的だとしたら、今回のTOMAHAWKの新作は90年代的とでも言えばいいでしょうか。そこに天台的なテイストを加えることで、不思議と2020年以降の世の中をリンクするという。
デュアンは本作に対し、「『TONIC IMMOBILITY』は、我々が感じる空気の中に存在する何かなのかもしれない。パンデミックやその他、諸々の事で、今年は厳しい年だった。ああだこうだ考えたり、結果を心配せず行動を起こすことができなかったので、多くの人達が無力で立ち往生していると考えている。レコードがそれを反映している限り、これは世界の現実からの脱出でもある。我々はネガティヴになったり、政治的になっているわけではない。私にとってロックは全ての代替現実だ。しかし、これもまた別の例だと思う」というコメントを寄せています。僕はこのアルバムを聴いて、この混沌としながらも暗闇から抜け出そうともがいているような、そんなイメージを持ちました。ただ、本作はそういったネガティブなだけではなく、一筋の希望を見出すこともできる。なんとなくですが、そんな印象を覚えたのもまた事実です。アルバム終盤、「Sidewinder」以降の流れからはまさにそう感じたんです。本当のところはわかりませんが……。
MR. BUNGLEの新作を聴き終えたときのような爽快感はないかもしれませんが、いろんな余韻を残す今作の方向性も個人的には大好物。日本ではストリーミングサービス/デジタルリリースがないのが残念ですが(4月中旬より配信スタート!)、できればCDやアナログ盤を購入して、その世界観に触れてほしいところです。
▼TOMAHAWK『TONIC IMMOBILITY』
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