DRY CLEANING『NEW LONG LEG』(2021)
2021年4月2日リリースの、DRY CLEANINGの1stアルバム。
DRY CLEANINGは2018年にサウス・ロンドンで結成された4人組ポストパンクバンド。2019年からEPやシングルのフィジカル/デジタルリリースを重ね、2020年後半に名門4ADと契約。PJハーヴェイなどとの共演で知られるジョン・パリッシュをプロデューサーに迎え、本作が制作されました。
ウェールズにて制作されたという本作は、60年代末から90年代前半にかけてのアートロックやサイケデリックロック、ガレージロック/パンク、ニューウェイヴ、ポストパンク、オルタナティヴロックなどのシーンで先陣たちが歩んできた道筋をたどりながらも、これらを2020年代に“リアル”なものとして成立させようとする気概が伝わる力作に仕上がっています。自分が10代後半から20代半ばにかけて愛聴したロックの世界観にもっとも近く、非常に馴染みの強い音だけど、それでいてどこか初めて接するような新鮮さもあり。そこが、単なる焼き直しで終わらないこのバンドの魅力なんだろうなと、改めて実感しました。
歌というよりはポエトリーのように響くフローレンス・ショウ(Vo)の個性的な歌唱と、ドライな音像で常にヒリヒリしたバンドサウンド。音を埋めていくというよりは、音をどう間引いてエモさを導くかに拘ったアレンジといい、ボーカルでエモーショナルさを構築しない方向性といい、一度聴いたらクセになる楽曲ばかり。我々80〜90年代リアルタイム通過組にとってはど真ん中であると同時に、ロックというものが“Out of Time”になってしまった今の若い世代にも新しく響くものがあるんじゃないか、そんなことを強く感じさせる「ミニマルなわりに主張の強い」1枚だと断言できます。
YouTube上に公開されているパフォーマンス映像(といっても、ここ1年くらいのものはどれも無観客のスタジオライブ形式ですが)を観るかぎり、スタジオ音源のみならずライブでもその実力を遺憾なく発揮するバンドでることは一目瞭然。だからこそ、このタイミングに夏フェスで来日することによって、その名を広く行き渡らせることができたんじゃないかと。そこだけが非常に勿体なくて。
このコロナ禍にデビューすることで、どのようにバズらせるかが大きな課題となっておりますが、彼女たちにはどうにかその突破口を見つけていただきたい。そう強く思わせてくれるこのアルバムが、できることならこのテキストを読んでいるすべての人に届くことを願っています。
▼DRY CLEANING『NEW LONG LEG』
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