MELVINS『FIVE LEGGED DOG』(2021)
2021年10月15日にリリースされたMELVINSの25thアルバム。日本盤は同年10月20日発売。
バズ・オズボーン(G, Vo)、デイル・クローヴァー(Dr, B)、マイク・ディラード(Dr)からなる“MELVINS 1983”で制作された今年2月リリースの『WORKING WITH GOD』に続く、2021年2枚目のアルバムはアコースティックアレンジで再録された過去の楽曲群+カバー曲からなる2枚組作品。1987年の1stアルバム『GLUEY PORCH TREATMENTS』から2017年の22作目『A WALK WITH LOVE & DEATH』までを総括しつつ、それらをダウナーなアレンジで再構築するという、単なるベストアルバムでは収まらない内容となっています。
30年にもおよぶ歴史を普通に総括しようとしたら、録音時期や状態によって音源のクオリテイはまちまちかと思います。かつ、時期によってはメンバーも異なりますし。でも、ここでは現在の編成……バズ(G, Vo)、デイル(Dr)、スティーヴン・マクドナルド(B/REDD KROSS、OFF!)ですべての録音を行なっていることで統一感が生じている。その効果か、クレジットを見ないとどの曲がどの年代に作られたものかわからないほどに、すべての楽曲が見事に“馴染んでいる”んです。
こうやってシンプルな編成で演奏することで、改めてMELVINSの楽曲がどれだけ後続のグランジ勢に影響を与えたのかが明白にもなります。NIRVANAをはもちろんのこと、曲によってはSOUNDGARDENやALICE IN CHAINSとの共通点も見つけられる。どれだけオリジナリティに満ち溢れた存在だったかが、ご理解いただけると思います。
と同時に、どの曲も2021年の耳で聴いても古臭く感じられず、むしろ普遍性の強さを再発見できる。それはメンバーの演奏力、表現力の賜物でもあるわけですが、それ以上に楽曲自体が持つパワーがいかに尋常じゃなかったかという証明でもあると思うのです。個人的には90年代前半、そこまで熱心に接してきたバンドではありませんでしたが、その影響力のすごさをこういう形で実感することになるとは、思いもしませんでした。
カバー曲も多彩で、REDD KROSS「Charlie」やFREE「Woman」、THE TURTLES「Outside Chance」、アリス・クーパー「Halo Of Flies」、THE ROLLING STONES「Sway」、BRAINIAC「Flypaper」、フレッド・ニール「Everybody’s Talking」と取り扱うジャンルも多岐にわたります。が、そのどれもが自身のオリジナル曲のごとく消化されており、中でもストーンズ「Sway」なんて90年代前半のアルバムに収録されていたと言われても信じてしまうくらい。ほかのオリジナル曲と間に挟まれても違和感なく、見事に馴染んでいます。
このアルバムを聴いて、改めて初期の諸作品に触れてみるのも良し。直近のオリジナルアルバムからさかのぼるもよし。もちろん、ここでのサウンドは企画色の強いものではありますが、その片鱗はその作品からも感じ取ることができますし、そもそも楽曲の素晴らしさ自体に変わりはないはずなので、いろんな時代の、いろんな編成のMELVINSを発見していただきたいと思います。
▼MELVINS『FIVE LEGGED DOG』
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