EVILE『HELL UNLEASHED』(2021)
2021年4月30日にリリースされたEVILEの5thアルバム。
EVILEは2004年にイギリスのハダースフィールドにて結成された4人組スラッシュメタルバンド。前身バンドではMETALLICAのカバーを中心にプレイしていたそうで、そのオールドスクール・スラッシュメタルをベースにした音楽性は現在まで引き継がれており、2007年にEarache Recordsからデビューして以降、ゼロ年代後半の新世代スラッシュメタルの立役者として注目され続けてきたそうです。
リリース元を新たにNapalm Recordsへ移し、前作『SKULL』(2013年)から実に8年ぶりに発表された本作ですが、この8年に間には数々のメンバーチェンジが発生しました。まず、2018年にリードギターのピアーズ・ドノ-フラーが脱退すると、2013年まで在籍していたオル・ドレイクが再加入します。ところが、2020年にはフロントマンのマット・ドレイク(Vo, G)が脱退。すると、オルがボーカルを兼務し、新たなリズムギタリストとしてアダム・スミスを迎えることに。もうそれ、新しいバンドじゃねえか?という気もしますが、オルは一応オリジナルメンバーなのでアリっちゃあアリなのかな。まあギリセーフってことで。
ボーカリストが交代したことで全体から伝わる印象が前作までとは若干異なるのは否めませんが、リードギターと兼務するオルのドスの効いた咆哮は、ドーピング感濃厚な激烈スラッシュナンバーとの相性抜群。SLAYERを筆頭とする80'sスラッシュメタルをベースにしていることはもちろんですが、要所要所でデスメタル以降のエクストリームメタルからの影響も感じられる。USデスグラインドバンドMORTICIANのカバー「Zombie Apocalypse」を収録しているあたりからも、そういったバックグラウンドはご理解いただけるはずです。
疾走感に満ち溢れた楽曲の数々は、オールドスクールなスラッシュメタルを愛聴するリスナーのど真ん中を突いてくるものばかり。と同時に、2000年代後半以降のスラッシュメタル・リバイバルとリンクする部分もあり、ただの懐古主義ではないことも伝わるのではないでしょうか。荒々しいサウンドですが、アレンジやギターソロのメロディアスさなどからは整理整頓/計算し尽くされた知的さも感じられるし。そのへん含め、どことなく一時期のANNIHILATORとも共通するような気がしなくもありません(単にリードギタリストが無理矢理ボーカルも兼務し始めたところが一緒、というだけではないですよ?)。
全9曲で42分というトータルランニングも、古き良き時代のスラッシュメタルを踏襲しており、ついついリピートしてしまいたくなる。個人的にはかなり好印象な1枚です。
▼EVILE『HELL UNLEASHED』
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