CALIBAN『DYSTOPIA』(2022)
2022年4月22日にリリースされたCALIBANの13thアルバム。日本盤未発売。
過去の楽曲に新たなアレンジを加え母国語(ドイツ語)で再レコーディングしたトラックが中心だった前作『ZEITGEISTER』(2021年)から約11ヶ月と、非常に短いスパンで届けられた新作。オリジナルかつ英詞中心の楽曲で構成されたアルバムとしては、前々作『ELEMENTS』(2018年)以来4年ぶりとなります。
ソングライティングの過程ではリモートでやり取りを重ねたこともあってか、メンバーそれぞれがもどかしさや不安、そして怒りを抱えていた。だからこそ、そういったネガティブな感情がすべて新曲にぶつけられているのではないか……オープニングトラック「Dystopia」や続く「Ascent Of The Blessed」のブルータルさからは、そういった負の感情の強さが伝わります。
もちろん、本作はただネガでヘヴィでアグレッシヴなだけではありません。随所にメロディアスな要素もしっかり備わっており、「VirUS」や「Phantom Pain」のような楽曲ではキャッチーなサビも用意されている。かつ、どの曲も3〜4分程度のコンパクトさで、1曲の中に無駄がまったく存在しない作り込み具合はさすがベテランといったところでしょうか。どれも攻撃性や殺傷力の強さは抜群でメタルコアリスナーを納得させるものがありつつ、ライトリスナーにもアピールするメロディアスさ、わかりやすさも甘すぎないさじ加減で用意されている。それこそ、「Alien」のような楽曲は今後キラーチューンに成長するのではないか、と思わされるほどのキャッチーさを感じ取ることができる。今年で結成25周年というタイミングに、こういった楽曲をまだまだ産み落とすことができる創作能力はさすがの一言です。
また、今作には旧知の仲間も多数ゲスト参加しており、オープニングトラック「Dystopia」ではANNISOKAYのクリストフ・ヴィチョレク(Vo)、「VirUS」ではHEAVEN SHALL BURNのマルクス・ビスコフ(Vo)と同郷のバンドメイトの、「Dragon」ではアメリカのデスメタルバンドJOB FOR A COWBOYジョニー・デイヴィ(Vo)のボーカルを楽しむことができます。また、2020年に解散したメルボルンのメタルコアバンドDREAM ON, DREAMERのカラン・オア(G)も今作の制作に携わっているとのこと。これもリモート制作が可能になった今だからこその共演といったところでしょうか。
「Dragon」や「Hibernate」など適度なゴシック感も散りばめられており、そういった荘厳さからはドイツのバンドらしさも伝わるのでは。全体を通して“痒いところに手が届く”感満載の、トータルバランスに優れたメタルコア作品の良作だと思います。
▼CALIBAN『DYSTOPIA』
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