AYRON JONES『CHILD OF THE STATE』(2021)
2021年5月21日にリリースされたエイロン・ジョーンズの3rdアルバム。日本盤未発売。
エイロン・ジョーンズはアメリカ・ワシントン州シアトル出身、現在34歳のシンガーソングライター/ギタリスト。過去に『DREAM』(2013年)、『AUDIO PAINT JOB』(2017年)という2枚のアルバムをインディーズから発表しており、2020年にUniversal傘下のBig Machine Recordsと契約。昨年から今年にかけて「Take Me Away」「Mercy」「Spinning Circles」をデジタルリリースしており、特に「Take Me Away」はBillboard Mainstream Rockチャートで最高5位、「Mercy」は同チャート最高6位を記録し、アルバム発売前から大きな注目を集めてきました。
「If Michael Jackson played guitar like Jimi Hendrix in Kurt Cobain's band」という例えがぴったりなエイロンの楽曲は、ブルースやハードロック、グランジ、ヒップホップ、ソウルなどの要素が随所から感じられるミクスチャースタイルで、ルーツこそ1990年代までのクラシカルなものですが、そのサウンドや表現方法は確実に2000年代以降のもの。かつ、どの楽曲も棘を持ちながらも非常にキャッチーなところも特徴的で、一聴して気に入る/惹きつけられるものが満載です。
以上のような説明から、エイロンをレニー・クラヴィッツと重ねる方も少なくないと思います。が、このアルバムはもっとロック色が強く、かつグランジ前後のオルタナティヴロックやRAGE AGAINST THE MACHINE以降の“ハードロック meets ヒップホップ”サウンドを通過したスタイルが強調されている。むしろ、先の例えの「NIRVANAにジミヘンが参加したようなギタープレイ」のほうがしっくりくるものがあります。
シンガーとしてのエイロンは……マイケル・ジャクソンとの比較はちょっと過大評価かなと思いますが……この適度にやさぐれたサウンドにはぴったりで、存在感も存分に感じられる。ギタリストとしては特別な非凡さは伝わらないものの、適材適所といった感じで各曲に最適なプレイを当てているように思います。良くも悪くも無駄がなく、すべては楽曲ありきといったところでしょうか。
古き良きアメリカンハードロックを好むリスナーはもちろんのこと、上記のようなオルタナ/グランジ以降のUSロックを愛聴する方、ソウルやR&B、ブルースを通過したモダンなロックを好む方々など幅広いリスナーにアピールする本作は、RED HOT CHILI PEPPERS以降のアメリカンロックの正統的後継アルバムだと断言できるでしょう。豪快なハードロックやリズムの跳ねたグルーヴィーなファンクロック、パワーバラード、サイケデリックテイストのオルタナティヴロックなど、過去30年のUSロックを振り返るという点においても非常に意味のある内容ですし、自身の出自を生々しく綴った歌詞からは、ここ10数年のアメリカの日常を感じ取ることもできる。そういった意味では今聴くことに価値のある重要作品かもしれませんが、きっと数年後に聴いても今と同じくらい魅力的に響く良作になるんじゃないか……そう確信しています。
▼AYRON JONES『CHILD OF THE STATE』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)