VOLA『WITNESS』(2021)
2021年5月21日にリリースされたVOLAの3rdアルバム。日本盤未発売。
VOLAは2006年に結成された、デンマークはコペンハーゲン出身の4人組プログレッシヴメタルバンド。2008年に初音源となるEP『HOMESICK MACHINERY』を発表し、以降はマイペースで活動を続けますが、2015年の1stアルバム『INMAZES』以降はコンスタントにまとまった作品を届けてくれています。
ボーカル&ギター、ベース、キーボード、ドラムという編成が生み出すサウンドは、Djentを起点にエレクトロニックミュージックを通過したモダンなプログメタル。7弦ギターの重低音を効果的に取り入れた、ポリリズムを駆使したリフワークはDjentそのものですが、随所に静と動の対比を効果的に見せるアレンジ、シンセやサンプリングで全体を包み込むようなアンビエント的なムード作りは非常に現代的の一言で、そこにポップなメロディと“叫ばない、グロウルしない”ストレートな歌声が乗ることで、クセになる不思議な空気感を作り上げることに成功しています。
また、楽曲単位でもすべて5分前後と、この手のバンドにしては比較的コンパクト。1曲1曲の作り込みからは尋常じゃないマニアックさが伝わりますが、そのアンビエント感からどこか宗教音楽にも通ずるものが伝わってくるメロディ運びやボーカルスタイルによって、本作が楽曲志向の強いバンドであることがご理解いただけます。ただ、そうは言っても「These Black Claws」のようにエレクトロニカ(&ヒップホップ)とDjent=静と動が交互に訪れるアレンジは、プログメタルの最新進化系と受け取ることもできる。こういったバンドこそ、メタルファンのみならずモダンなポップミュージックやR&B/ヒップホップに精通している音楽リスナーにも触れていただきたいと、願わずにはいられません。
本作にはインストバージョンは存在していませんが、このエレクトロ/アンビエントとDjentを通過したモダン・プログメタルの融合サウンドは、ぜひ一度ボーカル抜きでも楽しんでみたいところ。もちろん、VOLAおよび本作はこの浮遊感の強いボーカルありきなことは重々承知しているのですが、インスト版を聴くことで新たな発見がたくさんあるのではないかと、アルバムの隅々にまで神経を行き届けさせているうちにそう感じるようになったのです。きっと、メタルアルバムというよりは「エレクトロニカの突然変異バンドサウンド版」みたいな捉え方もできる気がするんですよね。
なんて、勝手な妄想がどんどん膨らむ本作でVOLAというバンドに初めて触れたわけですが、これを機に前作『APPLAUSE OF A DISTANT CROWD』(2018年)にも触れてみたのですが、これがまた違ったテイストで面白い。掘り始めたらいろんな発見がありそうなバンド、まずは今回の最新アルバムを入門編としてその扉を開いてみてはいかがでしょう。
▼VOLA『WITNESS』
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