WATERPARKS『GREATEST HITS』(2021)
2021年5月21日にリリースされたWATERPARKSの4thアルバム。日本盤未発売。
WATERPARKSは2011年にアメリカ・テキサス州ヒューストンで結成された3人組ロックバンド。現メンバーはアウステン・ナイト(Vo, G)、ジェフ・ウィギントン(G)、オットー・ウッド(Dr)で、パーマネントのベーシストは不在。2016〜18年にはマイキー・ウェイ(MY CHEMICAL ROMANCE、ELECTRIC CENTURY)がツアーメンバーとして参加していたそうです。
Hopeless Recordsから発表した前作『FANDOM』(2019年)から1年7ヶ月ぶりの新作となる本作は、300 Entertainment移籍第1弾アルバム。そのタイトルからベストアルバムのような印象を受けますが、内容は純粋なオリジナルアルバム。全17曲中6曲が昨年10月から今年5月にかけてデジタルシングルとして先行発表されているので、そういう意味では現時点での“グレイテスト・ヒッツ”集と呼べるのかもしれませんね。
彼らの音楽スタイルはヒップホップやEDM以降のモダンなエレクトロテイストを効果的に用いた、耳障りの良いポップロック/ポップパンク。バンドサウンドに強く拘っているようでもなく、曲によってはリズムトラックが完全な打ち込みだったりするし、ギターが登場しない楽曲も存在し、あくまで軸はボーカルであることが伺えます。で、その歌メロも非常にキャッチーで一度耳にしたらすぐに口ずさめそうなものばかり。前作『FANDOM』がBillboard 200で最高32位まで上昇していますが、それも納得の内容だと思いました。
ここ最近のFALL OUT BOY以降の流れを汲むそのサウンド/楽曲は、ジャンルの枠を超えて幅広い層に受け入れられる可能性の高いものばかり。もっと言えば、このアルバムに関して言えばジャンル分けこそ無意味なことにすら感じられます。上記のようなテイストに加えて、「The Secret Life Of Me」でみせるドラムンベース風アレンジのEDM、「American Graffiti」でのパワーポップスタイル、「You'd Be Paranoid Too (If Everyone Was Out To Get You)」でのグランジ/オルタナスタイルなど、その表現の幅はさらに広がっているからです。まさにポップ/ロックのおもちゃ箱……そういった意味では、この『GREATEST HITS』というタイトルは最適なものと言えるでしょう。
ここまで書くと、なんだか音楽性ブレまくりで芯のないアルバムのように感じられるかもしれません。しかし、聴いてもらえばご理解いただけるように、不思議と統一感は強い。質感や空気感は首尾一貫していて、間違いなくひとつのバンドの作品だと感じられるのです。うん、こういうの大好きです。
チャート上で新作ロックアルバムが苦戦を強いられる2021年。「ここまでやったら文句ないだろ?」と言わんばかりにやりたい放題の、非常に現代的な“ロック”アルバムが果たしてどこまで善戦するのか。その結果が非常に気になるところです。
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