PALAYE ROYALE『FEVER DREAM』(2022)
2022年10月28日にリリースされたPALAYE ROYALEの4thアルバム。
全米192位を記録した前作『THE BASTARDS』(2020年)から約2年5ヶ月ぶりの新作は、グラミー賞にノミネートされた経験を持つクリス・グレアッティ(YUNGBLUD、グライムス、ポッピーなど)をプロデューサーに迎えて制作。このコロナ禍でツアーできなかったことで、じっくりソングライティング&レコーディングに時間をかけ本作の制作に臨んだそうです。
その結果、本作は非常にコンセプチュアルなテイストを持つ良作だった前作を遥かに超える、バラエティ豊かな楽曲群がズラリと並ぶ、よりドラマ性が強い1枚に。最初に聴いたとき、なんとなくですがMY CHEMICAL ROMANCEの名盤『THE BLACK PAREDE』(2006年)とイメージが重なる、あるいは同作を思い浮かべる、そんな共通点が見つかる良作だと思いました。
オープニング曲「Eternal Life」およびエンディング曲「Off With The Head」にそれぞれ1分、3分のイントロ/アウトロを用意することで、アルバムとしてのドラマチックさがより増す結果に。そこから多様性に富んだ楽曲群……それはグラムロックであったりポップパンクやアートパンク、エモ、ブリットポップ、EDM通過後のダークポップなどさまざまな要素が散りばめられており、バンド形態を採っているもののすべての曲においてバンドという形にこだわらない楽曲アレンジも気持ちよく楽しめるものばかり。あと、曲によってはギターの重要度が高かったり低かったりと、そのへんもいろいろ使い分けているのも興味深い。
レミントン・リース(Vo)の適度にハスキーで耳障りのよいボーカルも、粒揃いな楽曲群の上でしっかり個性を発揮している。むしろこれくらい個性がないとスルーされてしまう恐れもあり、聴きやすさとアクの強さが共存する彼らのサウンドにおける大きなキーになっていることが理解できるはずです。ビジュアルも良いですし、2020年代を代表する“ロック”スターに化ける可能性大ですね。
シンガー/ソングライターのLPをフィーチャーした「Line It Up」、日本人の琴線にも触れるであろう良メロの「Paranoid」、アンセミックなタイトルトラック「Fever Dream」、聴き手の感情に訴えかける極上のバラード「Oblivion」など、とにかく捨て曲なしの名作。“あの頃”のポップパンクやエモを通過した世代、グラムロックという言葉に反応する世代、そして現在ヒットチャートを賑わすようなモダンポップをサブスクでリピートする世代と幅広くアピールするであろう本作は、ようやく日本盤リリースも実現しているので、これを機にもっと“届いて”ほしいという思いでいっぱいです。
▼PALAYE ROYALE『FEVER DREAM』
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