ELECTRIC PYRAMID『ELECTRIC PYRAMID』(2021)
2021年5月28日に日本先行リリースされたELECTRIC PYRAMIDの1stアルバム。海外では6月18日発売予定。
イギリス出身のELECTRIC PYRAMIDは2010年代後半から活動を活発化させ、アルバム発売に先駆け2019年夏には『SUMMER SONIC』で初来日を実現。当時は4人編成だったようですが、現在はオル・ビーチ(Vo)、クリスチャン・メンドーサ(G, Key, Vo)、ライナス・テイラー(G, Vo)、ルイージ・カサノヴァ(B, Vo)、クリス・ブライス(Dr, Per, Vo)の5人編成で活動しているようです。なお、ボーカルのオルはQUEENのマネージャーとして知られるジム・ビーチの実子とのこと。
プロデュースを手掛けたのはジョン・コーンフィールド(MUSE、OASIS、ロバート・プラントなど)。最近はGRETA VAN FLEETやDIRTY HONEYのように、20代の若者たちが60〜70年代のロッククラシックを現代によみがえらせるようなサウンドを奏でることが増えていますが、このELECTRIC PYRAMIDもまさにその系譜に含まれる存在と言っていいでしょう。ただ、先の2バンドがアメリカ出身なのに対し、今回紹介するELECTRIC PYRAMIDはイギリスのバンド。このアルバムではロッククラシックを下地にしつつも、ブリットポップ以降のUKロックの香りが随所に感じられ、それこそMUSEやKULA SHAKER、初期のKASABIANあたりが好きなリスナーにも引っかかるような要素がしっかり備わっています。
正直、フロントマンのオル・ビーチの歌声はそこまで個性が強くなく、ぶっちゃけ魅力を感じませんが、奏でられているサウンドは適度なプログロック感とブリットポップ色満載で、あの時代をリアルタイムで通過したリスナーなら嫌いになれないのではないでしょうか。かつ、60年代末から70年代にかけてのUKロックのオリジネーターたちの影響も随所に感じられる。個人的には80年代のニューロマンティック以降のテイストとも重なるところがあり、まったく新鮮味はないものの不思議と嫌いになれないんですよね。
ただ、ELECTRIC PYRAMIDというバンドならではのオリジナリティはまだまだこれからといったところで、今は「自分たちの好きな音楽を、自分たち流にミックスしました」止まり。ここから2枚目、3枚目とアルバムを重ねていくうちに確たるオリジナリティを確立できるのか否か……気になるところです。
正直、ここからどう化けるのか、あるいはこのまま消えてしまうのか……神のみぞ知るといったところですが、「これ!」というキラーチューンが生まれたときに一気に“山”は動くのかもしれませんね。なかなか思うように来日もできない昨今ですし、音源だけ発表して終わりという可能性もゼロではありませんが、できることなら息の長い活動を続けて“らしさ”を見つけ出してもらいたいものです。
▼ELECTRIC PYRAMID『ELECTRIC PYRAMID』
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