ICE NINE KILLS『WELCOME TO HORRORWOOD: THE SILVER SCREAM 2』(2021)
2021年10月15日にリリースされたICE NINE KILLSの6thアルバム。日本盤未発売。
ICE NINE KILLSは米・マサチューセッツ州ボストン出身の5人組メタルコア/デスコアバンド。2000年結成当初はICE NINE名義で活動を開始し、2006年の1stアルバム『LAST CHANCE TO MAKE AMENDS』から現在のバンド名に改名。3作目『THE PREDATOR BECOMES THE PREY』(2014年)から現在のFearless Recordsに所属し、ここ数作は著名小説やホラー映画をモチーフにした楽曲を制作して、注目を集めています。
本作はそのタイトル側からもわかるように、全米29位のスマッシュヒットを記録した前作『THE SILVER SCREAM』(2018年)の続編にあたる1枚。オープニングSE「Opening Night...」およびタイトルトラック「Welcome To Horrorwood」以外の12曲にはすべてモチーフとなるホラー映画が用意されており、そのタイトルも『キャビン・フィーバー』(2002年)、『チャイルド・プレイ』(1988年)、『サイコ』(1960年)、『ペット・セメタリー“(1989年)、『バイオハザード』(2002年)、『アメリカン・サイコ』(2000年)、『血のバレンタイン』(1981年。2009年にリメイク)、『ヘル・レイザー』(1987年)、『ザ・フライ』(1986年)、『ホステル』(2005年)、『死霊のはらわた』(1981年)、『キャンディマン』(1992年)と非常に幅広くピックアップされています。リメイク/リブートされた作品も複数含まれており、ホラー映画ファンなら誰もが知っているタイトルばかりですね。
各映画はあくまで歌詞や曲作りのベースとなっているだけで、その映画とリンクするサウンドかどうかはまた別の話。中には「Assault & Batteries」(元ネタ『チャイルド・プレイ』)や『Wurst Vacation』(元ネタ『ホステル』)のように映画の世界観とリンクした音作りやアレンジが施されたものもあり、そのへんはニヤリとさせられるものがあるかなと。まあ、基本的に映画のことを知らなくても楽曲自体は存分に楽しめる内容になっていると思います(かつ、MVではモチーフとなった映画のパロディもしっかり用意されているので、元ネタを知っているとさらに楽しめるのではないでしょうか)。
キャッチーを重視した芯が極太のメタルコアを軸に、随所にデスコア的フレイバーが散りばめられている。また、曲によっては(映画モチーフ曲が多いということもあってか)シンフォニックな要素も随所から感じられ、それらがこのバンドが本来持ち合わせたスケール感の大きさをより強調。結果、とてもわかりやすくて聴きやすい1枚に仕上がっているように感じます。テーマのキャッチーさや音楽的わかりやすさも相まって、本作は全米18位という近年のメタルコアバンドとしてはかなり好成績を残しているのも、頷ける話です(リリースタイミングがハロウィーン前というのもよかったですよね)。
また、アルバムには豪華ゲストも多数参加しており、「Hip To Be Scared」にはPAPA ROACHのジャコビー・シャディックス(Vo)が(この曲、途中で耳馴染みのあるフレーズが登場するのですが、タイトルを観て納得。HUEY LEWIS & THE NEWSのヒット曲「Hip To Be Square」のリフをパロっているんですね。笑)、「Take Your Pick」ではCANNIBAL CORPSEのコープスグラインダー(Vo)、「The Box」にはATREYUのブランドン・サーラー(Vo)とFIT FOR A KINGのライアン・カービー(Vo)、「F.L.Y.」にはSENSES FAILのバディ・ニールセン(Vo)がそれぞれの曲で華を添えています。それぞれのカラーに合った曲がしっかり用意されているので、どれも納得のコラボではないでしょうか。
アグレッシヴさやヘヴィさも抜群だし、同時にわかりやすさや親しみやすさも同じだけ備わっている。久しぶりにヒットするのも納得の1枚に出会えた気がします。USモダンメタルシーンもまだまだ捨てたもんじゃないですね。
▼ICE NINE KILLS『WELCOME TO HORRORWOOD: THE SILVER SCREAM 2』
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