MIDNITE CITY『ITCH YOU CAN'T SCRATCH』(2021)
2021年6月4日にリリースされたMIDNITE CITYの3rdアルバム。日本盤は同年5月26日に先行発売。
MIDNITE CITYはイギリス・ノッティンガム出身の5人組ハードロッバンド。フロントマンのロブ・ワイルド(Vo/TIGERTAILZ)とピート・ニューデック(Dr/EDEN'S CURSE、ex. GRIM REAPERなど)を中心に結成され、2017年のデビュー以降2枚のアルバムを発表し、2019年には初来日公演も実現させています。
BON JOVIやDEF LEPPARD、WHITESNAKEなどを中心に、80年代半ばから後半に世界の音楽シーンを席巻したHR/HMブーム、とりわけ“ヘアメタル”とカテゴライズされるスタイル(ヴィジュアル面およびサウンド)を現代に踏襲するMIDNITE CITYの楽曲&サウンドは、懐かしさ以上に新鮮味を覚えるものがあります。ロブ・ワイルドの所属するTIGERTAILZ(彼らこそ“80年代のUSヘアメタルに対するUKからの回答”と言われていましたが)ほどケバさやキワモノ感はなく、むしろBON JOVIやDEF LEPPARDが世界に向けて旅立っていく前後の、クールさと野暮ったさが同居した“ダサカッコよさ”を存分に楽しめる1枚だと思います。
楽曲およびサウンドのキラキラ具合はBON JOVIの出世作『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)前夜といった感じだし、そこにDEF LEPPARD的な重厚コーラスが加わることで豪華さも伝わる。能天気というよりは若干の翳りが見えるマイナーキーの楽曲群は、特にこのバンドの魅力、個性を際立たせるに十分な役割を果たしており、パワーバラードに頼りすぎないバランス感もベスト(ミディアムテンポの「Fire Inside」もバラードと言えなくもないけど、唯一“らしい”のは「If It's Over」。これがまた良いんですわ)。個人的にはかなりレベルの高い1枚と言えます。
ロブのボーカルがクセが弱く、どこかWARRANT時代のジェイニー・レインを彷彿とさせるのも、また良し。この手のバンドって、どこかジョン・ボン・ジョヴィ的なハスキーボイスが多くなりがちだけど、これくらいサラッとしているほうが聴きやすいし、飽きが来なくていいんですよ(あくまで個人的観点ですが)。
唯一難点を挙げるとすれば、ギターの主張が弱いことかな。耳に残るスペシャルなギターリフもないし(キーボーディストを含む編成だと若干後ろに引いてしまいがちなのかな)、ギターソロも平均的。曲が良いだけに、あと一歩なんですよね。
まあとにかく。軽く80点超えの良作。2021年に80'sヘアメタルってどうなの?という声もわかりますが、良いものは時代を超えて良いんです。まずは聴いてみてほしいな。
▼MIDNITE CITY『ITCH YOU CAN'T SCRATCH』
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