MAMMOTH WVH『MAMMOTH WVH』(2021)
2021年6月11日にリリースされたMAMMOTH WVHの1stアルバム。
MAMMOTH WVHは2020年10月に急逝したエディ・ヴァン・ヘイレンの実子であり、末期VAN HALENのベーシストでもあるウルフギャング・ヴァン・ヘイレンのソロプロジェクト。昨年11月に配信リリースされたオリジナル曲「Distance」が同名義での初作品となりましたが、今作はそれに次ぐフルアルバムとなります。
レコーディングは米・カリフォルニアに構えるVAN HALEN所有の5150 Studioにて実施。ウルフギャングはベースのみならず、歌やギター、ドラムなどすべてのボーカルパフォーマンス&楽器演奏を自身ひとりでこなし、プロデュースのみマイケル“エルヴィス”バスケット(ALTER BRIDGE、INCUBUS、SLASH、coldrainなど)に任せるという、まさにソロプロジェクトの名にふさわしい1枚に仕上がっています。
正直、親の七光りでここまで来た感が否めなかったウルフギャングですが、このアルバムを聴くとしっかり偉大な親から音楽を学び、いろんな才能を身に付けていたんだなと感心させられます。まず、その楽曲やサウンドはモダンなハードロックといった感じで、VAN HALENとはかけ離れたものがあります。なので、オールドファンはそこに関してあまり期待しすぎないほうがいいでしょう。
ただ、どの曲も非常にバラエティに富んだもので、歌も演奏もそつなくこなしている感が強い。それこそFOO FIGHTERSから暑苦しさを取り除くとこうなるんじゃないか?っていう、パワーポップとガレージロックとハードロックの中間といったバランス感が保たれており、適度なサイケ感と泣きメロ要素も散りばめられており、日本人の耳にも優しい。いや、むしろこれはアメリカ人よりも日本人向けじゃないかしら。そんな気がします。
アルバム本編ラストを飾るサイケな「Stone」のみ6分半の大作ですが、それ以外はすべて3〜4分とコンパクト。このへんのバランス感にも非常に優れており、ソングライターとしての非凡さは父親譲りかな。もしこの才能が、のちのVAN HALENで活かされていたら……と思ったのですが、VAN HALENでは出る幕もなかったんだろうな。なにせ周りが我が強い父親と、我が強い叔父と、我が強いフロントマンですし(苦笑)。
なお、日本盤のみボーナストラック「Talk & Walk」を追加収録。その前に収録されているのが先の「Distance」(一応ボーナストラック扱い)なんですが、できることなら収録順を逆にしたほうがよかったのでは? それくらい、「Talk & Walk」がアルバム本編のノリを引き継ぐ良曲だけに、ちょっとチグハグさが否めません。
どれも80点以上の優れた楽曲ですが、1曲だけでも95点レベルのキラーチューンがあったら完璧なデビューアルバムだったんだけどなあ。破綻することなく終始安心して聴ける1枚だけに、ちょっと優等生すぎたかしら。そこは次作へ向けた及第点ですね。
▼MAMMOTH WVH『MAMMOTH WVH』
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