2021年6月9日にリリースされたGASTUNKの4thアルバム。
新作音源としては、2度目の再始動時直後にリリースしたEP『DEADMAN'S FACE』(2010年)以来実に11年ぶり、オリジナルアルバムとしては解散前に発表した『MOTHER』(1988年)から33年ぶり(!)。BAKI(Vo)、TATSU(G)、BABY(B)に新メンバーKEI(Dr)を加えたラインナップで制作されました。
その情報を知ったとき、最初は『DEADMAN'S FACE』のときに感じた「22年ぶりの新曲!」という衝撃には及ばないものの、いざアルバムに触れたときの驚きと感動は『DEADMAN'S FACE』以上のものがありました。それくらい“あの”GASTUNKの新作であり、次のステージへと到達したGASTUNKの“新たな姿”が感じられる1枚だったのです。
『MOTHER』というコンセプチュアルな傑作で臨界点を突破した結果、終焉の道を選んだのは、大人になった今なら重々理解できます(当時高校生だった自分には「なんでだよ!?」という不満しかなかったけど)。だからこそ、それを超える次作を作るのは非常にハードルが高かったのではないかと勝手に想像していました(それが、これだけの時間を要した理由なんだろうな、とも)。けど、オープニングを飾る「Black Forest」から「Seventh Heavens Door」へと続く冒頭の構成を聴いただけで、そんなこちらの邪推が馬鹿馬鹿しくなるくらい、誰もが納得する1枚を作り上げた……そう実感しました。
BAKIが歌い、TATSUがギターを弾き、BABYがベースを弾き、そしてこの3人が楽曲制作に携われば自然と従来の“GASTUNKらしさ”が表出するのは当たり前のこと。ただ、それだけでは単なるセルフパロディになってしまう。そこに“これまでにありそうでなかった”テイストや、この33年間に蓄積されたミュージシャン/表現者としての経験、さらには新ドラマーKEIのセンスや個性が加わることで、過去の名作にも匹敵する正真正銘、問答無用の“GASTUNKのニューアルバム”が完成したわけです。
この感覚、もっとも近いのは……世代的なものもあるけど、やっぱりDEAD ENDの復活作『METAMORPHOSIS』(2009年)に触れたときに近いのかな。きっと若い世代には理解してもらえないだろうけど(苦笑)。
全14曲/66分と非常にボリューミーな内容で、すべてを反芻するにはもっと時間を要することになると思いますが、数回リピートした現時点では確実に「『MOTHER』の次のアルバム」であると認識していると同時に、「GASTUNKという名の新しいバンドのデビューアルバム」というフレッシュな感覚で楽しめている。また、ここ33年の間に誕生しては消えていったいくつものハード&ヘヴィなジャンルや、そこから派生したバンドたちの亡霊たちも見え隠れする。そういった者たちが達成させたくてもできなかったことが、この1枚に凝縮されている……そんな気もするのです。
デジタルリリースもなければ、ストリーミング配信もない。現状CDのみでしか聴くことができない1枚。だからこそ、CDを購入してじっくり聴き込んでほしい傑作アルバムです。CDリリースから1年近く経過した2022年5月16日より、デジタルリリースおよびストリーミング配信がスタートしています。同年8月末にメンバーのBAKI脱退がアナウンスされ、先行きが不透明ではありますが、まずはこの力作を聴いて次のアクションを待ちたいと思います。
▼GASTUNK『VINTAGE SPIRIT,THE FACT』
(amazon:国内盤CD / 国内限定盤CD / MP3)