DANNY ELFMAN『BIG MESS』(2021)
2021年6月11日にリリースされたダニー・エルフマンの2ndソロアルバム。日本盤未発売。
80〜90年代にOINGO BOINGOのフロントマンとして活躍すると同時に、『バットマン』(1989年)や『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993年)、『ミッション:インポッシブル』(1996年)、『メン・イン・ブラック』シリーズなどの数々の映画音楽を手掛けてきたダニー。純粋なるソロアルバムは『SO-LO』(1984年)以来、実に37年ぶりとなります。
Anti-Records/Epitaph Recordsから発表された本作は、全18曲/約72分におよぶ大作。自分はまだCD未購入のため、ストリーミングサービスを通じて本作に触れているのですが、前半8曲と後半10曲がそれぞれDISC 1、DISC 2と分割されているので、ある種コンセプチュアルなまとめかたをされているようです。
レコーディングにはジョシュ・フリース(Dr)やスチュ・ブルックス(B)、ロビン・フィンク(G)、ニリ・ブロシュ(G)、ウォーレン・フィッツジェラルド(G)など、その筋では著名なミュージシャンが参加。さらに多数の映画音楽/スコアを手掛けてきたダニーらしくオーケストラや女性クワイアも大々的にフィーチャーした、アヴァンギャルドかつドラマチックな1枚に仕上がっています。
オープニングを飾る「Sorry」の時点でおわかりかと思いますが、ボーカルの淡々とした歌唱のわりにバックトラックの攻めっぷり&エモーショナルさが半端ない。ストリングスなどの生音とインダストリアル調のエレクトロニックサウンドもどちらか一方が強すぎるということなく、絶妙のバランス感で成り立っており、そこから生まれる不思議な浮遊感が非常に気持ち良いんですね。「In Time」のような楽曲は、ボーカルこそなければ映画のサウンドトラックとして成立してしまいそうなテイストですものね。ただ、そこにこの淡々としたボーカルが乗るからこそ、なんとも言えない味わい深さが生まれるわけで、やっぱりダニーの歌なくしてこれらの楽曲は成立しないことも理解できるはずです。
全編にわたり激しさを追求するような音楽ではないからこそ、エッジの効いたサウンドが効果的に活きる。「Everybody Loves You」のような楽曲はまさにそのお手本のような1曲で、ここで本作の魅力の一端が見出せるのではないでしょうか。
長尺かつ情報量の多い作品なので、先にも触れたようにDISC 1、DISC 2と分割された前半・後半をそれぞれ1枚ずつじっくり聴き込んでいくのもありだし、「それでも俺は作者の意図するものどおりに楽しみたい!」という方はこの独創的な音世界にじっくり浸ってみるのもいいでしょう。実際、僕自身もまだすべてを反芻できているわけではないので、今後も時間をかけてじっくり吟味していきたいと思います(それもあって、現在CDを注文中)。
参加アーティストの名前にピンときた人、90年代以降のオルタナティヴメタルやインダストリアルロック、エクスペリメンタルロックを通過してきた人なら必ず引っかかるものがある傑作。2021年に必ず聴いておくべき1枚です。
▼DANNY ELFMAN『BIG MESS』
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