HACKTIVIST『HYPERDIALECT』(2021)
2021年6月18日にリリースされたHACKTIVISTの2ndアルバム。日本盤未発売。
HACKTIVISTは2011年から活動する、イギリスはミルトン・キーンズ出身の2MCラップメタル/グライムメタルバンド。当初は2MC(を擁し、Djentを積極的に取り入れたモダンなスタイルが早くから注目を浴びていたようです。2016年に1stアルバム『OUTSIDE THE BOX』をリリースしていますが、その後ラッパーのひとりが脱退し、代わりにアンクリーンボーカル専任シンガーが加入。クリーンボーカルを兼任していたギタリストも2018年にメンバーチェンジしています。つまり、この2作目のアルバムは新編成で初の作品であり、ボーカル面でもかなり新鮮に響く1枚と言えるのではないでしょうか。
とはいえ、僕が彼らの作品に触れるのはこれが初めて。あえて前作を聴かないままこの新作と向き合ったのですが……うん、普通にカッコいい。重低音を活かしたDjentに浮遊感の強いヒップホップサウンドやグライムのスタイルを大々的に織り交ぜることで、過去のラップメタルバンドとは一味違う個性を確立させている。もっとも最新型のストリートメタル/エクストリームミュージックと言えるのではないでしょうか。
気になるボーカルの絡みですが、アンクリーン専任シンガーもラップ調で歌っているので、結果として2MC体制が維持されるように映りました。歌メロらしいメロディのない楽曲中心なので、クリーンボーカルの役割はそこまで比重が高くなく、気持ち的にはヘヴィなヒップホップ/グライムに触れているという感覚が強いかもしれません。けど、そこがよかったりするんですが。
とはいえ、サウンド的には「Anti Emcees」の後半に登場するブラストビート風アレンジだったり、要所要所にエクストリームミュージックらしいアレンジも登場するので、LIMP BIZKIT以降のラップメタルファンなら問答無用で楽しめるはず。そこに「Planet Zero」などで聴けるようなリズミックなDjentアレンジが重なることで、なんとも言えない気持ちよさを堪能できるのではないでしょうか。
残念ながら歌詞に関しては完璧な形で解釈することは難しいのですが、過去のRAGE AGAINST THE MACHINEや最近のFEVER 333にも通ずるレベルミュージックとして機能しているようです。そもそも、HACKTIVISTというバンド名からして、政治や社会に対するアンチの姿勢が伝わりますものね。この手のバンドは本当なら、歌詞までしっかり踏まえた上で聴いて楽しみたい(あるいは評価したい)ところではあるのですが、もはや海外アーティストの対訳付き日本盤発売は超ビッグネームでもなければ実現が難しい世の中になってしまったので、ここは独自で可能な限り解釈していければと思います。
そういった意味では、サウンドのみを楽しんでいる現時点では彼らの魅力を100%解釈できているとは言い難いですが、それでもデカい音で聴いたときのカッコよさは筆舌に尽くし難いものがあるので、ここはぜひヘッドフォンやイヤフォンではなくてスピーカーを通して、このゴリゴリのサウンドを大音量で楽しんでもらいたいところです。きっと、浮遊感の強い音と轟音との対比含めて、より魅力が伝わるはずですから。
▼HACKTIVIST『HYPERDIALECT』
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