SOEN『IMPERIAL』(2021)
2021年1月29日にリリースされたSOENの5thアルバム。日本盤未発売。
SOENは2010年、マーティン・ロペス(Dr/ex. OPETH)を中心結成されたスウェーデン出身のプログレッシヴメタルバンド。初期には現TESTAMENTのスティーヴ・ディジョルジオ(B)も在籍していたようです。デビュー時からSpinefarm Recordsに所属するなど、今日に至るまで常にメジャーフィールドで活動しており、前作『LOTUS』(2019年)ではドイツでTOP30入り(最高22位)、Billboard Top Heatseekersで最高13位を記録する成功を収めています。
3rdアルバム『LYKAIA』(2017年)で初期からのスタイルを完成形に導き、続く4作目『LOTUS』で新たな方向性へと舵を切った彼らですが、この5作目は前作の延長線上にある1枚。テイストとしてのプログレッシヴロック感を随所に散りばめながらも、軸になっているのは2000年前後に勃発したニューメタル以降のモダンメタルということもあり、非常に聴きやすい内容と言えるでしょう。
どの曲も5分前後と、この手のバンドにしては比較的コンパクトにまとめられており、主張の強い演奏でグイグイ引っ張るというよりは曲/メロディの良さで勝負するという印象。ボーカルも中音域主体のメロディ作りで、クセが強すぎない歌唱法と相まって親しみやすさを覚えるものとなっている。旧来のハイトーンシャウトやデスメタル以降のスクリーム、グロウルに偏見を持つリスナー(あまりいないと思いますが)にもうってつけの1枚ではないでしょうか。
楽曲ありき、歌を届けるということに重きを置いていることもあってか、バンドとしてのクセや個性は過去作と比べて減退しているのが気になりますが、1枚のHR/HMアルバムとしては非常に優れた内容だと断言できます。
「Illusion」のように古き良き時代のプログレッシヴロックの香り(あくまで雰囲気モノですが)をさせる楽曲があるかと思えば、2000年前のニューメタルシーンを彷彿とさせる「Antagonist」みたいな曲もあったりで、そういった意味ではいかにも2000年代的な作品と言えなくもないですが、初期作にあったOPETHやTOOLからの影響が薄らいだ今、ここから先どういった強固な個性を確立させていくのかも気になるところ。出来は良いものの、バンドとしては過渡期にあるような気もするので、本当の勝負作は次の1枚なのかな。
▼SOEN『IMPERIAL』
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