BILLY F GIBBONS『HARDWARE』(2021)
2021年6月4日にリリースされたビリー・F・ギボンズの3rdアルバム。
ビリー・F・ギボンズとはZZ TOPのフロントマン、ビリー・ギボンズ(Vo, G)そのひと。ZZ TOPとしての最新作は『LA FUTURA』(2012年)以降リリースがストップしており、以降ビリーはBILLY BIBBONS AND THE BFG'S名義での『PERFECTAMUNDO』(2015年)、ビリー・F・ギボンズ名義での『THE BIG BAD BLUES』(2018年)と約3年おきに新作を発表し続けています。
本作はZZ TOPのメガヒット作『AFTERBURNER』(1985年)以降の諸作品や、ビリーのソロ2作にエンジニアおよびミュージシャンとして携わってきたジョー・ハーディー(2019年没)が初めて参加しないビリーの作品。代わりに今作ではビリーのほかマット・ソーラム(ex. GUNS N' ROSES 、ex. VELVET REVOLVERなど)、マイク・フィオレンティーノが共同プロデューサーとして携わっています。また、マットは前作から引き続き、本作でもドラマーとして全面参加。ソングライティングにも全面的に加わっています。
ジョー・ハーディーへの追悼の意も込められた今作は、70年代のZZ TOPを思わせる非常にスモーキーなブルースロックを思う存分堪能できる1枚。過去2作にはカバー曲も複数含まれていましたが、今作は全12曲中11曲がオリジナル曲。『AFTERBURNER』以降のデジタルエフェクトを施したサウンドが完全に払拭され、時に緩やかに、時にタイトなグルーヴを生み出すバンドアンサンブルが全面に打ち出され、それらのサウンドに引っ張られるかのよにリラックスした、味わい深いビリーのボーカルも味わうことができます。
ブギーやルーズなロックンロールが中心なのはもちろんのこと、「Vagabond Man」のようなスローバラード、ソウルフルで音数の少ないブルース「Spanish Fly」、ラーキン・ポーをフィーチャーしたゴキゲンな「Stackin' Bones」、ラテンテイスト強めな「Hey Baby, Que Paso」など、統一感が強いようで意外と楽曲の幅は広め。初期のZZ TOPが好きなリスナーなら当然のこと、“これぞアメリカ!”な豪快ロックンロールを思い切り楽しみたいというリスナーには絶対に手に取ってほしい1枚です。
今年でZZ TOPでのデビューからまる50年、今も変わらず最高にイカしたロックンロールを鳴らし続けてくれている事実はただただうれしい限り。特に2000年代に入ってからはZZ TOPの動きも停滞気味でしたが、御年71歳のビリーがここ10年精力的にリリースを重ねているのは、目前に迫るタイムリミットを意識してのことなんでしょう。もはや80年代的なZZ TOPサウンドは期待できそうにありませんが、時には思い出したようにあの頃の曲も演奏しつつ、可能な限り新しい作品を残し続けてほしいものです。
車を運転する方なら共感してもらえると思いますが、こういう音楽は深夜の高速道路ではなくて真っ昼間の海岸沿い一般道をチンタラ走りながら、爆音で楽しみたいものです(もちろん近所迷惑にならない程度に)。
▼BILLY F GIBBONS『HARDWARE』
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