MORDRED『THE DARK PARADE』(2021)
2021年7月23日にリリースされたMORDREDの4thアルバム。
80年代後半に結成され、スラッシュメタルバンドながらもDJを含む編成で早すぎるミクスチャーサウンドを鳴らし続けたMORDRED。90年代半ばに一度解散するものの、2001年に再結成してからはマイペースなライブ活動を続け、気づけばドラム以外オリジナルメンバーが復帰し、このたび1994年の『THE NEXT ROOM』以来27年ぶり(!)となるオリジナルアルバムを完成させました。
RAGE AGAINST THE MACHINE以降、ファンクやヒップホップを下地にしたハードロックやヘヴィメタルは少しずつ増えておき、90年代後半にはKORNやLIMP BIZKITなどがシーンを席巻。2000年代以降もラウドロックやミクスチャーロックなど、DJを擁する編成のバンドは多数存在しますが、そのオリジネーターのひとつがこのMORDREDと言えるのではないでしょうか(本当かな。笑)。
このアルバムで聴けるサウンドは、彼らのデビューから時代が何周もした2021年に聴くと決して新しいものとは言えないでしょう。オープニングを飾る「Demonic #7」のオープニングなんて、古き良き時代のスラッシュメタルそのものですから。ところが、途中から挿入されるスクラッチやサンプリング音、ラップテイストが強調されたボーカルスタイルを耳にすると……なんとも言えない気持ちになるんですよね。新しくもないけど、古臭いとも言い切れない。2021年的な音ではまったくないんだけど、僕らがどこかに忘れてきてしまった、置いてきてしまったある時代の音がここには詰まっている、そんなことを思い出させてくれるんです。
ファンクを通過したスラッシュメタルは90年代初頭、いくつか見受けられましたし、2021年の耳でそういった音を聴くと普通にカッコいいと思える。そんな今だからこそ、この新作で慣らされているMORDREDのサウンドは非常に自然体で、スクラッチやサンプリング音の挿入も非常にナチュラル。もはや手練れの域に達しつつあると言えるでしょう。
楽曲的にも、ヒップホップ以降のニューメタルやグルーヴメタル、あるいはラウドロックや現在ミクスチャーロックと呼ばれるものとも若干異なる、唯一無二のファンクスラッシュメタルが展開されている。これに関しては古臭いというよりも、むしろ何周も回って新鮮に映るのではないでしょうか。
ここ数年、スラッシュメタル再評価の波があるようですが、おそらくMORDREDのような亜種はそこには含まれないと思うんです。でも、だからこそ彼らのような突然変異で生まれたバンドも再評価されるべきだと、僕は声を大にして言っておきたいな。
もし2021年8月に『SUMMER SONIC』が開催されていたら、BEACH STAGEとか野外で彼らのサウンドを浴びたい……そんな妄想すらさせてくれる、なかなかの力作です。
▼MORDRED『THE DARK PARADE』
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