MDOU MOCTAR『AFRIQUE VICTIME』(2021)
2021年5月21日にリリースされたエムドゥ・モクター(MDOU MOCTAR)の5thアルバム。
エムドゥ・モクターは西アフリカのサハラ砂漠南縁のサヘル地帯に位置するニジェール共和国出身のギタリスト/シンガーソングライター。プリンスの映画『PURPLE RAIN』を再考した初のトゥアレグ語映画『Akounak Tedalat Taha Tazoughai』で主演を務め、爆発的なライブパフォーマンスで野外フェスを席巻。すでに各国のサイケファンの間で絶大なる評価を獲得しているとのことです(以上、プレスリリースより抜粋)。
エムドゥの名前をそのままバンド名に関したMDOU MOCTARとして4人編成で活動する彼らが、新たに名門オルタナレーベルMatador Recordsと契約。初の本格的ワールドワイドリリースとなったのがこのアルバムです。
サイケデリック度の強いバンドサウンド、アグレッシヴさと繊細さを持ち合わせたエムドゥのギタープレイからは説得力の強さが伝わり、そこにアフロビートをベースにしたグルーヴィーなリズム&アンサンブルが絡み合うことで、浮遊感の強い独特な空気を作り上げる。カッチリ決め込むよりも自由度の高いプレイは、この先どこへ向かっていくのか?という期待と緊張感が常に感じられるもので、一瞬たりとも聴き逃せないと思えてくる。例えとしては使い古されたものだと承知で言いますが、ジミ・ヘンドリクスやプリンスがアフリカに生まれていたら、きっとこんな楽曲をこんなアンサンブルでプレイしていたんじゃないか……そう思わずにはいられないほど、すでにギターヒーロー感の強い堂々とした歌とプレイを聴かせてくれるのです。
随所からブルースやソウルのテイストも感じられ、またジャマイカ側の香りもちらほら見つけられる。展開の読めないジャム度の高いプレイスタイルからは、PHISHあたりとの共通点も見つけられるので、ハードルが高そうに見えて実は間口は広い、だけど想像以上に奥深い……そんな作品ではないでしょうか。
もし今年、例年どおりのフジロックが開催されていたなら、間違いなくFIELD OF HEAVENで数日間、複数回パフォーマンスをしていたんだろうな……そんな妄想をしながら、フェスに行かない2021年8月を過ごしております。そういった意味でも、自分には2021年を象徴する1枚になりそうです。
▼MDOU MOCTAR『AFRIQUE VICTIME』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)