JOHN MAYER『SOB ROCK』(2021)
2021年7月16日にリリースされたジョン・メイヤーの8thアルバム。日本盤は同年7月21日発売。
『ROOM FOR SQUARES』(2001年)でのアルバムデビューから今年で20周年を迎えたジョン・メイヤー。前作『THE SEARCH FOR EVERYTHING』(2017年)から4年3ヶ月ぶりに発表された今作は、「80年代」をテーマに制作された異色の内容となっています。
サウンドのみならず、アルバムのアートワークやMVまですべてが80年代風テイストで統一されており、デジタル版アルバムジャケットには昔懐かしの“THE NICE PRICE”ステッカー(80〜90年代、よく輸入盤パッケージで見つけられたやつですね)が貼られていたり、リリース年が刻まれた値札シールがあったりと、とにかく凝った作り。実際、そのサウンドもすべてがすべてとは言わないものの、大まかに80年代の香り漂う懐かしい作りで、40代以上のリスナーにはどこか懐かしいものがあるのではないでしょうか。
オープニング曲「Last Train Home」は往年のTOTOを彷彿とさせるAORテイストですし、「New Light」や「Shot In The Dark」の音作りもまさにそれに近いもの。「Shouldn't Matter But It Does」や「Why You No Love Me」あたりはまあ80年代っちゃあ80年代かな?と言えなくもないソフトなミディアムバラードで、ジョンのギターは曲のテイストに合わせてか、全体的に引き気味ながらも程よい存在感を漂わせています。
なんていうんですかね、こういうの。古い言い方をすれば、ちょっとエロいカフェバー(笑)で流れていそうな音楽といいましょうか。80年代は田舎の中高生だった自分からすると、ここで表現されているサウンドはちょっと大人の音楽で、ちょっと遠い存在というイメージがあるかな。なんだか暗い過去の記憶が一気によみがえってきそうで、聴くのがちょっと怖いというか(笑)。
でもね、軸にあるスタンスは以前から大きく変わっていないと思うんです。歌心を大切にした表現方法(これだけのギターヒーローなのに、ギターが前に出過ぎないなど)は本作でも一貫しているし、「Wild Blue」後半のギタープレイも味わい深さを重視している。何周か回って訪れた80'sブームをジョンなりに噛み砕くとこうなります、という一種の声明のようでもあり、節目に自身のルーツを振り返るよい機会でもあり、混沌とした2021年夏における最良の清涼剤でもある。飛び抜けた凄みのようなものはないけど、いつでもどこでも、飽きずにリピートできる1枚ではないでしょうか。
世代的なものも大きいけど、これまでのジョンの作品の中でも一番好きかもしれません。やっぱり自身のルーツには逆らえません(笑)。
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