KING WOMAN『CELESTIAL BLUES』(2021)
2021年7月30日にリリースされたKING WOMANの2ndアルバム。日本盤未発売。
KING WOMANはアメリカの音楽家クリスティーナ・エスファンディアリ(Vo, G)を中心に、2013年頃から活動する4人組バンド。MISERABLEやNIGHTCRWLER、SUGAR HIGH、DALMATIANなどさまざまな名義/バンドで活躍するクリスティーナですが、KING WOMANでは主にドゥームメタルやシューゲイザーの影響下にあるポストメタルを展開しています。
本作はRelapse Recordsから発表された前作『CREATED IN THE IMAGE OF SUFFERING』(2017年)に続く、約4年半ぶりの新作。時にスラッジメタルのように重く引きずる音の塊を生み出し、時にはオルタナフォークのように静寂と闇で包み込むサウンドスケープを奏でる。その上に重なるボーカルは何かの呪文のようでもあり、あるいは子守唄のようにも聞こえる。その変幻自在なスタイルと表現方法はメタルというよりはオルタナティヴロックのそれに近いものの、結果として完成したものは非常にモダンなメタル/ヘヴィロックとして成立している。このクロスオーバー感こそ“2021年の音”という気がしてなりません。
MISERABLEと比べれば、本作でのシューゲイザー度は比較的低いものですが、グランジを通過したストーナーロック的サウンドに重なる“ギターの壁”は間違いなくシューゲイザーの影響下にあるもの。単なる衝動でかき鳴らすのではなく、ちゃんと意味があってそこで“鳴っている”ことが伝わる構成はどこか計算的でもあり、知的さや理性も見え隠れします。
どの曲も非常によく作り込まれているのですが、個人的なツボに入ったのは起承転結のはっきりした「Entwined」でしょうか。序盤からこの曲へとつなげる熱量の高まりは特筆に値するものがあり、中でもこの曲でのクライマックスに向けて熱量がピークに達するような歌と演奏、アレンジは一級品で、そこからラストに訪れる静寂含めて完璧と言えるもの。ここから「Psychic Wound」への流れも素晴らしいですし、そのまま「Ruse」「Paradise Lost」へと続くクロージングの構成も鳥肌モノです。
チェルシー・ウルフのようなアーティストが気に入っている方はもちろんのこと、昨今のポストメタルやシューゲイザー流れのヘヴィロックなどに多少なりとも興味がある人なら絶対に引っかかるはず。このひんやりとした世界観、熱帯夜にひっそり聴くには最適です。
▼KING WOMAN『CELESTIAL BLUES』
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