SLAUGHTER TO PREVAIL『KOSTOLOM』(2021)
2021年8月13日にリリースされたSLAUGHTER TO PREVAILの2ndアルバム。日本盤未発売。
SLAUGHTER TO PREVAILはロシアを拠点に活動する、ロシア人メンバー+イギリス人ギタリストからなるデスコアバンド。Sumerian Recordsとワールドワイド契約後、2017年に1stアルバム『MISERY SERMON』を発表し、SUICIDE SILENCEやWHITECHAPELなどとツアーを行い、好評を博しています。
2019年に「Agony」、2020年に「Demolisher」といったシングル(2曲とも本作にも収録)を連発してきた彼らが、これに続く2ndアルバムをついに発表。英語に加えロシア語も交えたアレックス・テリブル(Vo)のドギツい咆哮がどこかクセになり、アグレッシヴなのに心地よく聴こえてくる楽曲の数々は前作と比較したら若干柔らかくなったようにも感じられますが、あくまで前作比ですので……予備知識がない方が触れたら、終始攻めまくりのエクストリームサウンドに引いてしまうかもしれません(あと、「Baba Yaga」のMVもグロ&エグなので耐性のない方は視聴ご注意を)。
「I Killed A Man」なんてド直球なタイトルの楽曲も含まれていますが、意外にもこの曲が(デスコアにしては)キャッチーだったりして、非常に興味深い。「Bratva」あたりはグルーヴメタル/ニューメタルの影響下にあるミドルヘヴィチューンだし、デジタルエフェクトも用意された「Ouroboros」はどこか“SLIPKNOT以降”という表現がぴったり(ドラミングやギタープレイで他にない味付けが施されているのも注目点)。序盤こそ前作の延長線上にある狂気じみたスタイルですが、中盤以降は新たなチャレンジも見受けられ、かつそれらがキャッチーさを放っているのですから、最後まで飽きずに楽しめるはずです。
あと、ロシア語(かつデス声)で歌われるメタルって、意外とキャッチーなんだなと再認識。過去にもロシアのバンドっていくつか聴いたことがありましたが、このバンドの場合は英語詞よりもロシア語詞の楽曲のほうが耳障りがよかったりして。ドイツ語で歌うバンドや南米出身のバンド同様、いかつさやパーカッシヴさが良い方向に作用するのでしょうか。デス声で歌ってしまえば基本的には歌詞もそこまではっきりと聞き取れないので、全然アリだなと思いました。
この変化が吉と出るか凶と出るかはわかりませんが、僕自身は好意的に受け入れています。事実、この手の作品にしては何度も繰り返し楽しめていますから。メンバーがマスク姿(MVやアートワーク参照)というキャッチーさ含め、うまくいけばアメリカでも受け入れられるんじゃないか……そんなポジティブな予感も伝わってくる、なかなかの良作です。
▼SLAUGHTER TO PREVAIL『KOSTOLOM』
(amazon:海外盤CD / MP3)