LINGUA IGNOTA『SINNER GET READY』(2021)
2021年8月6日にリリースされたLINGUA IGNOTAの4thアルバム。日本盤未発売。
LINGUA IGNOTAはアメリカ出身のマルチ・インストゥルメンタリスト/パフォーマンスアーティストのクリスティン・ヘイターによるエクスペリメンタルプロジェクト。クリスティンはTHE BODYやFULL OF HELLなどとのコラボレーターとしても知られ、前作『CALIQULA』(2019年)には彼らのほかUNIFORMのメンバーもレコーディングに参加し、その“クラシック+ブラックメタル+ノイズミュージック”的スタイルが話題を集めました。
ダークさが際立った前作から2年を経て届けられた今作は、彼女のバックボーンであるクラシック音楽をベースに、アパラチアの民族音楽の影響下にある宗教色の強い楽曲と、バンジョーやチェロ、ピアノ、パイプオルガンなどを中心としたリズムレスの楽器演奏にて構築されています。ノイジーでメタリックなデジタルエフェクトが全体を覆っていた前作とは異なり、ここでは生音を重視した作風で、ボーカルも複数重ねることで『CALIQULA』とはまた異なった宗教感がにじみ出ているような気がします。
もはやこれをどんなジャンルで括ればいいのか、あるいは括る必要があるのか、正直わかりません。まだ前作のほうがメタル耳にはわかりやすかった気がしますが、これはこれでフォークメタルの延長線上、あるいは最果てという意味でアリなんじゃないかという気がしてきました。
自分はキリスト教徒ではないので正しい例えかどうかはわかりませんが、このアルバムに触れていると“癒し”よりも“救い”や“許し/赦し”という言葉が浮かんできます。非常にこじつけっぽくてアレですが、ここで鳴らされている音楽はコロナ禍における教会音楽なのかな、と……しかも、その教会すら現存するものではなく、それぞれの中にある理想郷のような存在かもしれない。正直自分でも何を言っているのかわからなくなってきましたが、本作はそんな理想と現実に向き合わせてくれる、稀有な存在なんじゃないかなと。
歌われている内容を完全に把握できていないので、すべて憶測でしかありませんが、このアルバムが今を生きる人にとって“救い”や“許し/赦し”になってくれたら……そんなことを思い浮かべながら、この心地よくもどこか歪な作品に今日も浸ってみたいと思います。
▼LINGUA IGNOTA『SINNER GET READY』
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