QUICKSAND『DISTANT POPULATIONS』(2021)
2021年8月13日にデジタルリリースされたQUICKSANDの4thアルバム。フィジカル(CD、アナログ)は同年9月24日発売予定。日本盤未発売。
1990年から活動を開始したQUICKSANDは、何度かの解散・活動休止期間を経て2012年からはパーマネントで活動中。2017年にトム・カポネ(G)がバンドを離れ、現在はウォルター・シュライフェルズ(Vo, G)、セルジオ・ベガ(B)、アラン・ケイジ(Dr)の3人で活動を続けています。また、セルジオは2009年からはDEFTONESにも参加しており、現在まで両バンドを掛け持ちする形で活動しています。
前作『INTERIORS』(2017年)から3年9ヶ月ぶりに届けられた今作は、初めて正式に3人編成で制作された1枚(前作にもトムの名前はクレジットされていたものの、実際にはソングライティングやレコーディングに一切関わっていなかったことをのちに公表)。前作同様ウィル・イップ(CODE ORANGE、NOTHING、TURNSTILEなど)がプロデュースを務め、ジョシュ・ウィルバー(AVENGED SEVENFOLD、LAMB OF GOD、MEGADETHなど)がミックスを担当しています。
適度なスピード感を備えながらも、全体的にはグルーヴ感の強いミディアムチューンで独特の空気を作り上げている印象で、タイトなリズムと相まって終始気持ちよく聴くことができます。メロディラインも非常によく練り込まれており、流麗さと不穏さが交互に訪れるようなテイストはさすがに一言。90年代の王道ポストハードコア感を残しつつ、しっかりと2021年らしくアップデートしたアレンジやバンドアンサンブルも聴き応えの強いもので、全11曲/33分があっという間に感じられるほどです。
昨今の若手バンドに見られる斬新さやエポックメイキングな要素は皆無ながらも、自分たちがやるべきこと、リスナーから求められることをしっかりと提示しつつ、バンドとしても時代に沿ったアップデートを遂げている。そのバランスをよい塩梅で維持するのは非常に難しい作業だと思いますが、この新作ではそういった均等が見事に取れており、その結果聴き終えたあとの充実感は前作以上だと断言できます。前作制作時はアンバランスな状況だったことも大きいでしょうが、今作ではそういったマイナス要素がまったく感じられず、この手のバンドとしては問答無用の傑作に仕上がったのではないでしょうか。
90年代からのポストハードコアリスナーのみならず、昨今のこの手のバンドを愛聴するリスナー、そしてDEFTONESのファンにも間違いなく引っかかる本作。素晴らしすぎるの一言で片付けたくない、もっと広く聴かれるべき1枚だと声高に宣言しておきます。
▼QUICKSAND『DISTANT POPULATIONS』
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