ECLIPSE『WIRED』(2021)
2021年10月8日にリリースされたECLIPSEの8thアルバム。
スウェーデン・ストックホルム出身の4人組メロディアスハードロック/ヘアメタルバンドの彼らも、今年でデビュー20周年。前作『PARADIGM』(2019年)、およびライブアルバム『VIVA LA VICTOURIA』(2020年)を経て届けられた今作は、20年以上にわたる活動の集大成と呼べるような内容/仕上がりです。
2000年代前半〜半ばにかけて、北欧ではこういったヘアメタルからの影響が強いバンドが多数登場しましたが、今作で聴くことができる彼らのサウンドはEUROPEなど同郷の先輩たちの影響下にあるメロディアスなハードロックが主軸。「Saturday Night (Hallelujah)」なんてタイトルだけ見たらパーティロック調かなと思いきや、適度な湿り気を帯びたマイナー調の“らしい”作風。アコースティック主体のパワーバラード(すげえ矛盾してますが。笑)「Carved In Stone」も、北欧の厳しい寒さが空気として伝わってきそうなテイストで、そりゃ嫌いになれるわけがない。非常に好みです、こういう音/楽曲。
以前もどこかで書いたかもしれませんが、僕は2000年代のこの手のバンドにあまり触れておらず、どちらかというと当時は若干の嫌悪感すら持っていました。だって、ヘアメタルって音楽性を示す名称じゃなくて、ヴィジュアル系と同じ括りですからね。もちろん良い曲があるのは知っていましたが、なんとなく偏見があって避けて通ってきたところがあるんです。
ところが、このサイトの運営を本格的に再開させた5年くらい前から、そういったジャンル/アーティストに対してもまずは偏見を取っ払って聴いてみよう、と思うようになり、サブスクなどを通じて気軽に触れるようになったわけです。その結果、本作のような良作に出会うことができた。そういった意味ではサブスクリプションサービスって、本当に新しい出会いの場になっていると思うんです。
さて、話題を本作に戻します。過去作に一切触れずに本作と接したわけですが、80年代〜90年代初頭のBON JOVIやDEF LEPPARD、解散前のEUROPE、あるいは90年代のFAIR WARNINGなどを筆頭に、マイナーキーの美メロを武器としたハードロックを下地にしつつ、タイトな演奏とコンパクトなアレンジでまとめ上げているなと感心しました。かつ、メロディラインも非常に練られており、まったく飽きが来ない。こういったバンドの場合、どうしても似通った曲が複数あったり、あるいは1曲くらい(妙に陽気なパーティソングみたいな)捨て曲があったりするものですが、全11曲/41分を終始楽しく聴くことができた。結局のところ、良い曲、良い歌、良い演奏という基本が守られていれば、知らないアーティストでも楽しめるものなんだなと再確認させられました。
ベートーヴェン「歓喜の歌」の主メロを引用した「Twilight」のような遊びもありつつ、先人たちの影響をベースにどこまでもオリジナリティを追求した本作は、まさに北欧バンドならではの1枚と言えるでしょう。刺激よりも安心感を味わいたいリスナーにうってつけの良作です。
▼ECLIPSE『WIRED』
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