PARADOX『HERESY II – END OF A LEGEND 』(2021)
2021年9月24日にリリースされたPARADOXの8thアルバム。日本盤は海外に先駆け、同年9月22日発売。
PARADOXは80年代半ばに結成された、ドイツ出身の4人組スラッシュメタル/パワーメタルバンド。1991年に一度解散するものの、1998年に再結成して以降、中心人物のチャーリー・スタインハウアー(Vo, G)を軸にメンバーチェンジを繰り返しながら現在まで活動を続けています。
前作『PANGEA』からおよそ5年ぶりの新作となる本作は、彼らの代表作でもある2ndアルバム『HERESY』(1989年)の続編にあたる1枚。レコーディングにはバンド結成時の一員でもあるアクセル・ブラハ(Dr)のほか、クリスチャン・ミュンツナー(G/OBSCURA)、オリー・ケラー(B)という過去の在籍メンバーが集結しています。
『異端』という邦題が付けられ、当時は日本盤も発売された『HERESY』でしたが、2021年の耳で聴くと若干の古臭さを感じさせつつも、スラッシュメタルとジャーマンパワーメタル的なテイストが程よいバランスで融合した良作でした。そんな傑作のパート2という立ち位置ですが、正直なところ共通点はさほど見つからないかなと。確かにスラッシュメタルとパワーメタルが融合したテイストはPARADOXそのものですが、どうにも『HERESY』の頃とは別モノという気がしてならない。これが2021年のPARADOXということなのでしょう。
とにかく1曲1曲がやたらと長く、オープニングを飾る「Escape From The Burning」からして約8分。全13曲中、6分超えの楽曲が6曲もあり、そのうち2曲は9分台という事態。唯一の4分台である「A Man Of Sorrow」も、そのインタールード(イントロ)である「A Man Of Sorrow (Prologue)」を加えれば6分台なので、結局は6分以上が半数超え。なもんですから、アルバムのトータルランニングも76分と非常に長くて、噛み砕くのに相当な時間を要する。なんだか勿体ない気がするんですよ、このアルバム。
『HERESY』の素晴らしさって、その即効性に強いアグレッションとメロディアスさ、全9曲で42分という程よい長さにあったと思うんです。ところが、その続編の今作は倍近い長さ。これ、せめて60分以内にまとめてくれていたら、もうちょっと印象に残る作品になったんじゃないかな……長い曲が多い、曲数が多いのはいいんですけど、やたらめったら詰め込めばいいってものでもない。5年分の蓄積であったり、名作の続編という気合いの入りっぷりもあったとは思うけど、ちょっとだけ空回りしている気がしました。
1曲1曲は平均点を与えられるだけの仕上がりだし、リフがカッコ良かったり歌メロに惹きつけられたりと、一瞬でも「おおっ!」と思える良曲はあるものの、ひとまとまりになると散漫に聞こえてしまう。そこだけが残念でなりません。本当に惜しい1枚。
▼PARADOX『HERESY II – END OF A LEGEND 』
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