OBSCURA『A VALEDICTION』(2021)
2021年11月19日にリリースされたOBSCURAの6thアルバム。
前作『DILUVIUM』(2018年)から3年4ヶ月ぶりの新作。2020年にフロントマンのシュテフェン・クメラー(Vo, G)以外の3人が全員脱退し、クリスティアン・ミュンツナー(G)、ヨルン・パウル・テセリン(B)、ダーヴィト・ディーポルト(Dr)が加入しました。クリスティアンとヨルンはそれぞれ2ndアルバム『COSMOGENESIS』(2009年)、3rdアルバム『OMNIVIUM』(2011年)期に在籍した元メンバー。古くからのファンにはうれしい出戻りではないでしょうか。
また、『COSMOGENESIS』から長らく在籍したRelapse Recordsを離れ、今作では新たにNuclear Blast Recordsへと移籍。旧知の仲のメンバーをかき集め、新天地で第一歩を踏み出すという気合いの入った1枚でもあるわけです。
そんなわけですから、聴く前から過剰に期待が高まっていた本作。オープニングを飾る7分超えの「Forsaken」を再生すると……あれ……うん……わかるんだけど……普通のヘヴィメタルじゃないか、これ……と素直に飲み込めずにいました。確かにOBSCURAらしさは随所から感じられるんだけど、正統派メタル的な色合いが強まっており、ちょっと違和感。何度もリピートすれば飲み込める、はず。
ですが、そんな不安も2曲目「Solaris」で解消。そうそう、この感じよ。この不安を掻き立てるようなスタイルを待っていたのよ。が、続くタイトルトラック「A Valediction」や「When Stars Collide」も「Forsaken」の延長線上にあるスタイルで再び違和感を覚える。悪くないんだけど……。
エクストリームさは随所に散りばめられているんだけど、全体的に聴きやすい。リスナーに向けて間口を広げているのは素晴らしいけど、前作に夢中だった身としては今回は若干ストレートすぎる気が。もっとも、他のこの手のバンドと比べたら十分に異質で、実はストレートには程遠いんですけどね(彼らにしては、ということです)。「In Unity」とか「Devoured Usuper」など中盤には不穏さ漂うテクニカルデスメタルが展開されていますが、その後も序盤のようなテイストは至るところから漂ってくる。なんだろう、うまく言語化できないけど……。
あと、前作までにあったOPETH的なメランコリックなプログメタル/プログロック的要素が後退した印象も受けます。ドラマチックなテイストは「Orbital Elements II」や「Heritage」を筆頭にいろんなところから受け取ることができますが、それらはどちらかといえばストレートなヘヴィメタル的な側面が強く、自分が求めているものとは異なる。思えば、前作は『COSMOGENESIS』から続いたコンセプト連作の最終章であったわけで、本作は新たな幕開けでもある。だから、それまでと若干違ったことにチャレンジするのは当たり前のこと。この変化を前向きに捉えるか否かは聴き手次第だけど、個人的にはちょっとだけ肩透かしだったかな。
数回リピートしたところで、「1曲1曲がコンパクトで聴きやすいし、これはこれで良いかも……」と思えてきたけど、やっぱりもっとも気に入っているのがラストの「Heritage」というあたりに、自分が彼らに何を求めているのかが透けて見えてしまう。う〜ん……。
客観的に見たら非常に優れたヘヴィメタルアルバムで、聴く人が聴けば最高にカッコいいアルバムになること間違いなし。だけど、主観的には求めていたものとは異なる……そういう1枚です。
▼OBSCURA『A VALEDICTION』
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