STEVE WHITEMAN『YOU'RE WELCOME』(2021)
2021年7月2日にリリースされたスティーヴ・ホワイトマンの1stソロアルバム。日本盤未発売。
ご存知、KIXのフロントマンとして40年以上にわたり活躍し続けるスティーヴ。KIXが90年代に一度解散したあとは、FUNNY MONEY(STEVE WHITEMAN & FUNNY MONEYとも)というバンドで活動していたこともありましたが、純粋なソロ作品はこれが初めてとなります。
レコーディングはスティーヴ(Vo, B, G, Harp)にKIXやFUNNY MONEYでの盟友ジミー・チャルファント(Dr)、1984年までKIXに在籍していたブラッド・ディヴェンス(B)のほか、ボブ・パレ(G)、FUNNY MONEYのディーン・クラマー(G)という気心知れたメンツが参加しており、プロデューサーにはこの5人の名前がクレジット。さらに、レコーディングやミックスなどのエンジニアリングをブラッドが担当しています。
ギターの歪みがそこまで強くないこと、また楽曲自体も肩の力が抜けレイドバックしたロックンロールが中心なことから、KIXのようなAC/DC直系のハードロックというよりはTHE ROLLING STONESの影響下にある、ルーズなアメリカンロックという印象が強いかな。年齢的なこともあり、スティーヴの歌声も以前ほどハリが感じられず、結果その枯れ具合がスカスカのロックンロールにフィットしているように感じられました。
楽曲自体は可もなく不可もなくの、ごく普通のロックンロール。そんな中、「Shock」のように湿り気の感じられる楽曲や、「Bad Blood」のような疾走チューンからはKIXの香りも感じられる。かつ、要所要所でスティーヴの吹くブルースハープがフィーチャーされることで、否が応でもKIXが思い浮かんでしまうし、したくなくても比較してしまう。長期にわたりバンドの顔として活躍してきた、クセの強いフロントマンの宿命ですね。
KIXの延長線として聴くと肩透かしを喰らうかもしれません。しかし、すべてがすべて「KIXっぽくないか」と問われると、そうでもない。KIXとしての新作が『ROCK YOUR FACE OFF』(2014年)以降途絶えていることもあり、どうしてもこのアルバムにKIXを求めてしまいたくなりますものね。でも、KIXがこういう方向性に進む世界線だって考えられたわけで……そう考えると、アリにも思えてくるんじゃないでしょうか。
「Kid Dynamite」みたいにKIX本編では出て来なそうな平均点以上の楽曲も複数含まれているし、全体的にも水準以上の仕上がりだと思います。KIXのスピンオフとして、心の隙間を埋めてくれる1枚ではないでしょうか。なんだかんだで、僕は結構リピートしています。
▼STEVE WHITEMAN『YOU'RE WELCOME』
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