MØL『DIORAMA』(2021)
2021年11月5日にリリースされたMØLの2ndアルバム。
MØLは2012年結成、デンマーク出身のポストブラックメタルバンド。Bandcampを通じて楽曲を発表し続け、2018年にリリースされた1stアルバム『JORD』は“ブラックゲイズ界の新たな新星”として界隈で高く評価されました。
Nuclear Blast Recordsと新たに契約して制作された今作では、レコーディングおよびミックスをチュー・マドセン(GOJIRA、MESSHUGGAH、HEAVEN SHALL BURN、DIR EN GREYなど)が担当。音のふくよかさと分離の良さが際立つ、この手のサウンドにしては非常に聴きやすい1枚に仕上がっています。
音の組み立て方や楽曲の方向性、ボーカルスタイルなどはブラックメタルやエクストリームメタルのそれなのですが、随所から匂い沸き立つシューゲイザー/ドリームポップ的な浮遊感やキャッチーさとが合間って、ブラックメタル的なアングラ感を薄めてくれている。このへんは先駆者のALCESTやDEAFHEAVENとの共通点も見受けられ、両者のリスナーならすんなりと受け入れられるはずです。
また、ボーカルに関してもスクリーム一辺倒ではなく、「Vestige」後半や「Redacted」にはクリーントーンの歌声もフィーチャーされている。このへんは後期DEAFHEAVENに近いものがありますが、そのモダンなアレンジ含めMØLのほうがよりメタリック。最近のDEAFHEAVENはちょっと……という生粋のメタラーには、このMØLのアルバムで慣らしてからDEAFHEAVENへ戻っていくと、意外といけるかもしれませんよ。
また、プログメタル的な曲展開も随所から伝わり、特に終盤2曲(「Tvesind」「Diorama」)は7〜8分の大作とあってそのへんの魅力をより強く味わうことができるはず。もちろん、それ以外の楽曲も5分前後と比較的コンパクトながらも、1曲の中に複雑な展開がいくつか用意されているので、最後まで興味深く堪能できるのではないでしょうか。全8分/46分という昔ながらも尺も好印象で、比較的“ひとつのアルバム/曲の集合体”として飽きずに楽しめるはずです。
「これ!」というキラーチューンがあるわけではないですが、最初から最後までを通してムードを楽しむという点において、本作はアルバム単体として語るべき1枚かもしれません。これが最高傑作ではなく、あくまで入り口。この先にさらなる高みが待っていると期待させてくれる良作です。
▼MØL『DIORAMA』
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