BANG TANGO『DANCIN' ON COALS』(1991)
1991年5月28日にリリースされたBANG TANGOの2ndアルバム。日本盤は同年7月21日発売。
デビュー作『PSYCHO CAFE』(1989年)が全米58位という、新人としてはまずまずの成績を残したLA出身の5人組バンドBANG TANGO。ロス出身のバンドらしい煌びやかでいかがわしいハードロックをベースに、オルタナ色の強いミクスチャーサウンドで個性を発揮した彼らが、この2作目で一気に化ます。
ジミ・ヘンドリクスのレコーディングにも携わったジョン・ジャンセン(CINDERELLA、FASTER PUSSYCAT、WARRANTなど)をプロデューサーに迎えた今作は、前作よりもミクスチャー感を強めた作風に。前作でのヒット曲「Someone Like You」路線を期待した方は、オープニングを飾る「Soul To Soul」でのファンキーさにひっくり返るのではないでしょうか。もちろんこのカラーも前作の時点で備わっていたものですが、ここまでストレートにファンクロックを奏でられると、一瞬「へっ、別のバンド?」と焦るかもしれません。
続く「Untied And True」こそ従来の路線ですが、「I'm In Love」「Big Line」「Cactus Juice」などのファンキーさからはEXTREMEとはまた違ったファンクロック感が伝わってきます。演奏だけ聴くとRED HOT CHILI PEPPERSっぽくもあるのですが、フロントマンであるジョー・レステ(Vo)のクセが強い歌声のせいもあり、唯一無二の存在感を確立させている。このサイケ&ファンキーなミクスチャーロック感って、同時代に活躍したJANE'S ADDICTIONあたりとも通ずるものがあり、むしろ彼らはHR/HMの範疇よりあっち側で語られるべき存在だったのではと気づかされます。
アコースティックギターやピアノ、ゴスペル調のコーラスをフィーチャーしたバラード「Midnight Struck」も、その独特な歌声のおかげで他に似ない独特な空気を作り上げている。ストレートなタイトルトラック「Dancin' On Coals」は「Someone Like You」路線ですが、そこから「My Saltine」で再びファンク路線へと回帰。この曲はブラスセクションをフィーチャーしており、黒っぽさをより強めることに成功。カイル・カイル(B)のスラップを多用したファンキーなベースプレイも、このバンドの個性を強めることに一役買っているし、ティグ・ケトラー(Dr)のリズムキープも非常にスリリングさがあって好印象。そこに乗るギター2本が程よくハードロック感を提示しているから、このヘンテコなミクスチャー感が生まれているんでしょうね。
いわゆるストレートなロックチューンは、どこかビリー・アイドルあたりを彷彿とさせるものがあり、特にファンク度が上がった本作においては、こちらのタイプの曲のほうが異物感を醸し出している。うん、これでいいんですよ。個人的には1作目よりもこっちのほうが好みだし、実際完成度も上だと信じております。
ただ、いかんせん1991年という過渡期に発表されたせいもあり、全米113位と前作ほどの成功を収めることができず、バンドは1992年にライブEP『AIN'T NO JIVE... LIVE!』を発表したあとにMCA Recordsからドロップアウト。3作目の『LOVE AFTER DEATH』(1994年)をインディーズから発表し、翌年に一度解散します。その後、何度か再結成/解散/メンバーチェンジを繰り返し、2019年にはオリジナルメンバーで再結成を果たしたばかりです。
▼BANG TANGO『DANCIN' ON COALS』
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