TORRES『THIRSTIER』(2021)
2021年7月30日にリリースされたTORRES(トーレス)の5thアルバム。日本盤は同年8月4日に発売。
TORRESとはニューヨーク・ブルックリン出身のシンガーソングライターであるマッケンジー・スコットの別名(アーティスト活動時の名義のひとつ)。現在30歳の彼女が学生時代にスタートさせたプロジェクトのようなもので、2013年に1stアルバム『TORRES』を発表し、出世作となった3作目『THREE FUTURES』(2017年)はかの4ADからリリースし、当時注目を集めました。
Merge Records移籍第1弾となった前作『SILVER TONGUE』(2020年)から1年半という短いスパンで届けられた今作は、セルフプロデュース作だった前作から一転し、スコットのほか前々作にも携わったロブ・エリス(PJハーヴェイ、PLACEBO、シャーロット・ハザレイなど)とピーター・マイルズ(ARCHITECTS、SYLOSIS、WE ARE THE OCEANなど)の共同プロデュース作。コロナ禍真っ只中の2020年秋、イギリスのMiddle Farm Studiosでレコーディングされたそうです。
ダークな作風が印象的だった前作から一転、今作は壮大で抜けの良い楽曲がズラリと並ぶ。アルバム冒頭を飾る「Are You Sleepwalking?」では、エッジの効いたギターが印象的なグランジ/オルタナティヴロックに、サビでは突然エレクトロポップテイストにシフトするという独特な世界観を展開。スコットのボーカルも中性的な側面を強めており、これまでとは異なる実験性が伝わる仕上がりです。
かと思えば、リード曲「Don't Go Puttin Wishes In My Head」ではエレポップテイストのアリーナロックを展開。この壮大かつ抜けの良さの象徴のようなこの曲は、どこか80年代を思わせる作風で、これをリード曲に持ってくるあたりに祝祭感が伝わってきます。事実、彼女はこのアルバムに対して「これまでの人生で感じたことのない深い深い喜びが引き出された。私は自分の中にロックを感じ、ほかの人たちの喜びを引き出す手助けをしたいと感じるようになった」と、ネガティブ思考な時代の中に一筋の“Joy”を見つけたことがこのポップネスにつながったのだとコメントしています(ソース)。
多幸感の強いフォークソング「Constant Tomorrowland」、キャッチーなオルタナティヴロック「Drive Me」や「Hug From A Dinosaur」、センチメンタリズムと激しさが共存するロックチューン「Thirstier」、ブリープテクノ的なテイストもはらんだ「Kiss The Corners」、デジロックテイストの「Keep The Devil Out」などロック色の強い楽曲中心ながらも、その間を縫うようにムーディーなスローナンバー「Big Leap」のような楽曲も用意。全10曲/35分という尺ながらもバラエティ豊かな楽曲群をたっぷり楽しむことができるはずです。
穏やかながらも実験性の強い前作の作風も非常に好みでしたが、今作はアートワークのテイスト含めて個人的にど真ん中。もっと早くに紹介しようと思っていたのですが、夏場のバタバタ(忙しかったり体調崩したりコロナ疑惑もあったり)で気づけば年末。今年リリースされた作品を振り返ろうと、iTunes(ってもう言わないのか。笑)内の音源をおさらいしていたらこのタイミングに再発見したというわけです。
個人的な2021年ベストアルバム候補の1枚。年末までに過去作含めてまたリピートしておきたいと思います。
▼TORRES『THIRSTIER』
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