WALTARI『3RD DECADE: ANNIVERSARY EDITION』(2021)
2021年11月26日にリリースされたWALTARIのリレコーディングアルバム。
KREATORの一員としても知られるサミ・ウリ・シルニヨ(G)が在籍するフィンランド・ヘルシンキ出身の6人組ミクスチャーバンドWALTARIにとって、今年は『MONK-PUNK』(1991年)でのアルバムデビューから30年という節目。当初はアニバーサリーツアーを計画していたものの、このような状況になってしまったことにより予定を変更し、アニバーサリーアルバムを制作することになったそうです。
過去の楽曲を単に再レコーディングするだけではなく、各曲にバンドと縁のあるアーティストたちをフィーチャー。そのメンツもユルゲン・エングラー(DIE KRUPPS)ヤマルコ・ヒエタラ(ex. NIGHTWISH)、ヨンネ・ヤルヴェラ(KORPIKLAANI)、LORDI、ELÄKELÄISETなどバラエティに富んだ面々で、リメイクされた名曲群に華を添えています。
僕自身はこのバンド、名前こそ知っていたものの、本作で初めて触れることになります。30年にわたる長い活動歴を軽くおさらいするには最適な本作ですが、現代的にリメイクされていることもあってか、非常に聴きやすい仕上がりと言えます。早くからラップメタルやインダストリアルのテイストを導入してきたバンドだそうですが、本作ではそういった要素に加えてダブステップやEDMなどの導入、フィンランド民謡的な側面なども随所から感じられ、一筋縄でいかない個性的な音楽性を堪能することができます。
ぶっちゃけ、非常に好みの音。モダンメタル的なテイストに前時代風のザクザクしたギターリフ、ハイトーンで歌い上げるのではなく低中音域を巧みに使うカルツュ・ハタッカ(Vo, B, Key)の表現力など、随所からドイツのRAMMSTEINとの共通点も見受けられる。そりゃ嫌いなわけがないですよ。もっと早くに触れておけばよかったなと、このアルバムを聴いて思わされました。
また、曲によってゲストボーカルの個性が強く打ち出されており、そのへんも楽曲の多彩さに拍車をかけています。女性シンガーのニキ(BARBE-Q-BARBIES)とカルシュの歌声の相性が抜群のロックンロールナンバー「Misty Man 2021」や、ヨンネ・ヤルヴェラとイルキ69(THE 69 EYES)と3人のシンガーの個性が強く打ち出された「In the Cradlie 2021」などは本作におけるハイライトと言えるのではないでしょうか。
単なるベストアルバムのようで新作としても十分に通用するテイスト、そしてアニバーサリー企画ならではのお祭り感と、このタイミングだからこそ作り上げることができた本作。僕のようにまだWALTARIの音に触れたことがないというビギナーにこそ、ぜひ手にしていただきたい1枚です。特にモダンメタルやミクスチャーロックが好きなリスナーなら絶対に引っかかるはずですから。
▼WALTARI『3RD DECADE: ANNIVERSARY EDITION』
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