THE LURKING FEAR『DEATH, MADNESS, HORROR, DECAY』(2021)
2021年11月19日にリリースされたTHE LURKING FEARの2ndアルバム。日本盤は同年11月24日発売。
THE LURKING FEARはAT THE GATESのトーマス・リンドバーグ・レダント(Vo)とエイドリアン・アーランドソン(Dr)を中心に結成されたスウェディッシュ・デスメタルバンド。メンバーは2人のほか、ヨナス・スタルハマー(G/AT THE GATES、GOD MACABRE)、フレドリック・ウォーレンバーグ(G/SKITSYSTEM)、アンドレアス・アクセルソ(B/TORMENTED、DISFEAR、ex. EDGE OF SANITY)といった面々で、同編成で2017年8月に1stアルバム『OUT OF THE VOICELESS GRAVE』をリリースしています(前作リリース時はヨナスはまだAT THE GATESの一員ではなかったんですよね。そう考えると現在の布陣は感慨深いものがあります)。
AT THE GATESとしても今年7月に3年ぶりの新作『THE NIGHTMARE OF BEING』を発表したばかりですが、それと平行してTHE LURKING FEARとしても約4年ぶりの新作制作に着手。これも2020年初頭以降続くコロナ禍による影響が大きいのでしょう。にしても、AT THE GATESの『THE NIGHTMARE OF BEING』と対照的なアルバムを同タイミングに作り上げるという事実は、非常に興味深いものがあります。
抒情的なテイストをより強めたメロディックデスメタルで孤高の存在ぶりを提示した『THE NIGHTMARE OF BEING』に対し、THE LURKING FEARの2作目『DEATH, MADNESS, HORROR, DECAY』はストイックなまでのピュア・デスメタル(この例えよ。笑)を展開。1〜2分台のショートチューンが大半を占める構成も非常にルーツを感じさせるもので、M-8「Kaleidoscopic Mutations」にクリス・レイファート(Vo, Dr/AUTOPSY、ex. DEATHなど)が参加しているのもそういったこだわりが伺えます。
かつ、ラヴクラフトのホラー小説から引用されたバンド名のとおり、サウンドや歌詞を含め聴く者に不安や恐怖を与える要素が随所に用意されている。その文学的な歌詞の内容含め、ぜひ対訳の付いた日本盤にてお楽しみいただきたいところです(染谷和美さんによる和訳が本当に素晴らしいので)。
上記のような楽曲以外にも、このバンドの持つ不穏さはアルバムラストナンバーの「Leech Of The Aeons」にも端的に表れています。この曲はアルバム中最長の5分強という尺ですが、冒頭のアレンジといい、そこから続くバンドアンサンブルといい、自分がデスメタルに求める要素がすべて詰まっている完璧な仕上がり。この1曲のために本作を聴いてもいいくらい、というのは言い過ぎかもしれませんが、とにかく「2021年におけるデスメタルとはなんぞや?」という命題に真正面から向き合った1枚ではないでしょうか。
日本盤CDやデジタル版などには、2曲のボーナストラックを追加。カナダのデスメタルバンドSLAUGHTERの「The Curse」とUSデスメタルバンドPOSSESSEDの「Seance」という、デスメタルのオリジネーターたちのカバーを楽しむことができます。このあたりにも、THE LURKING FEARのこだわりを垣間見ることができます。
AT THE GATESとTHE LURKING FEARで対照的な良作2作を作り上げたトーマスやエイドリアンですが、トーマスに関してはさらにLOCK UPとしても最新作『THE DREGS OF HADES』(2021年)を11月末に発表したばかり。働きすぎでしょ(苦笑)。
▼THE LURKING FEAR『DEATH, MADNESS, HORROR, DECAY』
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