THE HELLACOPTERS『EYES OF OBLIVION』(2022)
2022年4月1日にリリースされたTHE HELLACOPTERSの8thアルバム。
スタジオアルバムとしては全曲マイナーなガレージロックのカバーで構成された7thアルバム『HEAD OFF』(2008年)以来14年ぶり、全曲オリジナル曲で構成された新作としては6thアルバム『ROCK & ROLL IS DEAD』(2005年)以来約17年ぶり。2016年の再結成後には1996年当時の未発表曲を現編成でレコーディングした「My Mephistophelean Creed / Don't Stop Now」を発表しているものの、まさかここまでたどり着くとは想像もしていませんでした。
レコーディング参加メンバーはニッケ・アンダーソン(Vo, G/IMPERIAL STATE ELECTRIC、LUCIFER、ENTOMBED)、ドレゲン(G, Vo/BACKYARD BABIES)、ロバート・エリクソン(Dr)、アンデス・“ボバ”・リンドストローム(Key)の2ndアルバム『PAYIN' THE DUES』(1997年)時の布陣。正式ベーシストは不在で、レコーディングではニッケがプレイし、ライブではIMPERIAL STATE ELECTRICやTHE DATSUNSのドルフ・デ・ボーストが参加しているようです。
プロデュースは4thアルバム『HIGH VISIBILITY』(2000年)以降すべての作品を手掛けてきたチップス・キーズビー(BACKYARD BABIES、MICHAEL MONROE、SPIDERSなど)が引き続き担当。ゲストとして、ニッケの別バンドLUCIFERのヨハナ・サドニス(Vo)がコーラスとして参加しています。
全10曲(日本盤ボーナストラック除く)で34分半というコンパクトな内容は、往年のクラシックロック的であると同時に現代的でもある。そもそも2ndアルバム『PAYIN' THE DUES』なんて30分にも満たなかったし、3rdアルバム『GRANDE ROCK』(1999年)だって38分。本来の姿に戻っただけなのです。
肝心の内容は、リードトラック「Reap A Hurricane」のときに書いたように、ニッケが語るところの「The Beatles meets Judas Priest or Lynyrd Skynyrd meets the Ramones but the best way to describe this album is that it sounds like The Hellacopters today.」的内容。「Reap A Hurricane」を聴き、このコメントを読んで僕は「初期2作と中後期のハイブリッド」と予想しましたが、まさにそういう仕上がりでした。ぶっちゃけると、もうちょっと初期2作のカラーが強いかな?とも思ったのですが、意外と中後期のレイドバック路線の延長線上にある流れで、『ROCK & ROLL IS DEAD』や『HEAD OFF』に続く正統的新作だと断言できます。つまり、時期を限定せずTHE HELLACOPTERSの新作を常に楽しんできたリスナーには、問答無用で楽しめる1枚なのです。
序盤はミディアムから若干アップテンポといったタイプの楽曲が中心で、3曲目にブルージーなミディアムスローナンバー「So Sorry I Could Die」が来るあたりに新境地的印象を覚えます。かと思えば、続くタイトルトラック「Eyes Of Oblivion」から再びギアを入れ直し、ニッケ&ドレゲンのツインギターがカッコいい「Positively Not Knowing」、イントロが確かにJUDAS PRIESTっぽんだけど軽快なメジャーキーが斬新な「Tin Foil Soldier」、グルーヴィーなアップチューン「Beguiled」、キャッチーなメロディを含む王道ガレージロック「Try Me Tonight」と新しさと従来の路線が混在している。バンドとして、そして表現者として常に成長を続けていることを窺わせる、文句なしの傑作ロックアルバムです。
日本盤にはボーナストラック5曲を追加し、トータル51分という長尺さ。オリジナル新曲「Don't Hold On」のほか、THE BEATLES「Eleanor Rigby」、STRING DRIVEN THING「Circus」、G.B.H.「I Am The Hunted」、THE BROGUES「I Ain't No Miracle Worker」という本編以上にバラエティに富んだ楽曲群を楽しむことができます。ぶっちゃけ、この5曲だけを抜き出してEPとして売り出すことだってできるのに、なんて太っ腹なんだ。ここでは完全にTHE HELLACOPTER節が備わった「Eleanor Rigby」が出色の仕上がり。聴くまでは不安だったけど、一番ツボでした。
さてさて。こうなると生で彼らのステージを観たいですよね。最後の来日は2001年1月でよかったのかしら……期待しても、いいですよね?
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