VOLUMES『HAPPIER?』(2021)
2021年11月19日にリリースされたVOLUMESの4thアルバム。日本盤未発売。
VOLUMESは2000年代末に結成された、ロサンゼルス出身のメタルコアバンド。Djentやプログメタルの影響下にある硬質サウンドと、プログメタルのわりに1曲が2〜3分台と非常にコンパクトな作風が魅力といえる存在です。ここ数年は大幅なメンバーチェンジがあり、2021年現在は2016年に加入した元BURY YOUR DEADのマイク・テリー(Vo)、そのマイクと入れ替わりで2015年に脱退したものの2020年に再加入したマイケル・バー(Vo)、そしてラード・サウンダニ(B, Programming)とニック・ウルシック(Dr)という変則的な4人。というのも、結成時からの一員であるガス・ファリアス(Vo)が2019年末、彼の兄弟であるディエゴ・ファリアス(G, Programming)が2020年1月に相次いでバンドを脱退し、その直後の2月にディエゴがこの世を去る悲劇に見舞われるのです。
そういった困難を前にしても、バンドはマイケル・バー再加入を祝して新曲「Holywater」を2020年1月末に発表。同タイミングに、coldrain主催フェス『BLARE FEST.2020』出演のため来日を果たしています。その後、世界は新型コロナウイルスの感染拡大により未曾有の事態に突入しますが、VOLUMESは歩みを止めることなく、同年9月に新曲「Weighted」を配信リリース。共同制作者としてマックス・スカッド(G, Programming)を迎え、前作『DIFFERENT ANIMALS』(2017年)から約4年半ぶりとなる新作アルバムを完成させるのでした。
Djent〜プログメタル経由のパーカッシヴなリフ&リズムが心地よい従来の彼ららしい楽曲も多数存在しますが、例えば先の「Weighted」はKORNを筆頭とするサイケデリックなモダンメタルのテイストも散りばめられているほか、「Into You (Hurt)」あたりからはDEFTONESとの共通点も見つけられる。これらの新規軸がアルバム中で浮いてしまうことなく、非常に彼ららしい味付け(主にギター面でのアレンジ)にて並べられ、1枚のアルバムを通して気持ちよく楽しむことができるのです。
適度なデジタルエフェクトを織り交ぜながらも、Djentを通過したメタルコアらしいグルーヴィーさが展開されるオープニングトラック「FBX」を筆頭に、キャッチーな歌メロが乗せられた「Bend」、カオティックなサウンド&アレンジがとことん気持ち良い「Man On Fire」など、どれもが平均点以上の仕上がり。2人のボーカリストの個性もそこそこ伝わってきますし、この手のアルバムとしては非常に聴きやすい仕上がりではないでしょうか。
ただ、このバンドならではの突出した個性は若干乏しいものがあり、先のKORNやDEFTONESからの影響を露わにしたことは良い形で作用したものの、そういった要素は彼らだけの特徴とは言い難いものがある。また、ギタリストがセッションメンバーということも大きく、なんとなくこれまでのスタイルをなぞっているだけという印象も。そういった点は多少なりともマイナスポイントに働いているかもしれません。
とはいえ、この手の作品としては75〜80点と平均点超えの仕上がり。ここにVOLUMESならではの個性やキメの1曲が加われば、プラス10点といったところでしょうか。そういった意味では、過渡期の1枚かな。サウンドプロダクションなどの完成度は非常に高いだけに、ぜひ次作での“二度目の開花”に期待したいところです。
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