KYUSS『WRETCH』(1991)
1991年9月23日にリリースされたKYUSSの1stアルバム。日本盤未発売。
KYUSSは米・カリフォルニア州パームデザート出身のストーナーロックバンド。前身バンドでの活動を経て、1989年にバンド名をSONS OF KYUSSに変更、翌1990年に初のEP『SONS OF KYUSS』を自主制作で発表しました。その後、ジョン・ガルシア(Vo)、ジョシュ・ホーミ(G)、ニック・オリヴェリ(B)、ブラント・ビョーク(Dr)という布陣が揃い、Dali Recordsから1stアルバムをリリースすることになります。
KYUSSというと『BLUES FOR THE RED SUN』(1992年)以降の作品のイメージが強く、実際同作やメジャー移籍後の『WELCOME TO SKY VALLEY』(1994年)でその個性が開花した印象があります。それは間違いない事実であり、この1stアルバムではまだ前進バンド時代からの空気を残した、ハードコアパンクの影響下にあるハードロック/ヘヴィメタルが中心となっています。
ストーナーロックというと、ヘヴィで引きずるようなミドル/スローテンポというパブリックイメージがあるかもしれませんが、本作で聴くことができる楽曲の大半は性急なビートで若干前のめりなアップチューン。オープニングを飾る「(Beginning Of What's About To Happen) Hwy 74」や続く「Love Has Passed Me By」と、2曲連続でガレージパンク以降の疾走感を伴う楽曲が続き、良い意味でストーナーロックの印象を覆してくれます。
もちろん、「Son Of A Bitch」などミドルチューンも複数存在しますが、BPM的には通常のストーナーロックよりは速いものが多数で、ジョン・ガルシアのボーカススタイルや歌声の作用して、どこかMETALLICAにも通ずる空気感を感じ取ることができます。タイミング的にはブラックアルバム(『METALLICA』)の1ヶ月後に発売されているので、このタイム感はこの時代ならではのものだったのかもしれません。
ハードコア的な側面も随所から見つけることができるという点では、同時代に活躍し、のちにストーナー色を強めていった先輩格のCORROSION OF CONFORMITYにも似たところも多い。そういえば、彼らもMETALLICA的な空気をはらんでいますものね(しかも、ペッパー・キーナンと、KYUSSの2代目ベーシストのスコット・リーダーはのちにMETALLICAの新ベーシストオーディションも受けていますし)。
全11曲の収録曲の中には、自主制作EP『SONS OF KYUSS』から「Black Widow」「Deadly Kiss」がそのまま流用されたほか、「Love Has Passed Me By」「Katzenjamme」「Isolation(EP収録時のタイトルは「Isolation Desolation」)」の3曲は再レコーディングされている。そういった点を考慮すると、本作は結成からここまでの集大成としてまとめられたもので、ある意味では続く2ndアルバム『BLUES FOR THE RED SUN』がKYUSSとしての本格的デビュー作と言えるのかな。なので、このアルバムはそれ以前のSONS OF KYUSS時代とそれ以降のKYUSS時代の過渡期でもあると。そう考えると、次作での劇的変化も納得いくものがあります。
『BLUES FOR THE RED SUN』以降とは別モノかもしれませんが、1991年の時代性が強く反映されたという点においてはHR/HMリスナーにとって外せませんし、ジョシュ・ホーミおよびQUEENS OF THE STONE AGEのリスナーにも聴いておいてもらいたい、良質な1枚です。
▼KYUSS『WRETCH』
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