SIAMESE『HOME』(2021)
2021年12月10日にリリースされたSIAMESEの6thアルバム。日本盤未発売。
SIAMESEはデンマーク出身のメタルバンドで、メンバーにバイオリン奏者を含む5人編成。2014年まではSIAMESE FIGHTING FISHというバンド名で活動し、2枚のアルバムを制作後に現在のSIAMESEに改名。セルフタイトルの3rdアルバム『SIAMESE』をクラウドファンディング経由でし、続く4thアルバム『SHAMELESS』は日本盤化もされています。
前作『SUPER HUMAN』(2019年)から約2年半ぶりに発表された今作は、前作の延長線上にある作風で、Djentなどのモダンメタルのテイストに加え、EDMをはじめとするダンスミュージック/エレクトロの味付けも随所に施された挑戦的な内容。一方で、各楽曲の軸となるメロディラインは非常に流麗で美しいものがあり、その重低音を効かせたサウンドに反して非常にポップで聴きやすいものがあります。
オープニングを飾る「Heights Above」でのドラマチックなバンドアレンジと、Djentやメタルコアをミックスさせたモダンなサウンド、キャッチーなメロディとシンガロングパートなど、1曲の中にさまざまな要素を詰め込みつつ散漫になることなくしっかりまとめ上げるその能力は、前作以上に高まっているように感じます。
ドリュー・ヨーク(Vo/STRAY FROM THE PATH)をゲストに迎えた続くタイトルトラック「Home」も同系統の流れにあるものの、EDMなどのエレクトロ色を強めることで聴き手を飽きさせることがまったくない。「Holy」ではBPMを一気に上げたかと思えば、「Honest」ではダークポップ風バラードで聴き手の心を鷲掴みにする。
以降も緩急に富んだアレンジでリスナーを惹きつけ、ローリー・ロドリゲス(Vo/DAYSEEKER)をフィーチャーした「Enough Ain't Enough」や、ドラムンベースのリズムを取り入れた「Numb」、ビョークの名曲をメタルコアアレンジでカバーした「Joga」などフックとなる楽曲が随所に用意されている。同系統の曲が多くサラッと聴き進められるわりには、味付けが工夫されていることから途中で飽きることもなく、最後まで集中力が途切れることもない。1曲1曲をじっくり聴き込むと、実はそれぞれかなり手の込んだメロディの作り込み、多彩なアレンジが施されていることに気づかされます。
それもそのはず、アンドレアス・クルーガー(G)はシガーラやエラ・エアといったポップアーティストたちに楽曲提供し、それらが大ヒットを記録しているのですから。このポップセンスは稀有なものであることが、こういった事実からも伺えます。と同時に、ひとつの形に固執しないサウンドスタイルやアレンジの手法、自由な発想にも目を見張るものがあり、結果として本作をこのバンドにとっての最高傑作にまで到達させることができた。納得の結果ですね。
個人的な感想ですが、本作はモダンメタルというよりは「モダンポップがモダンメタルに接近した」1枚という印象も。むしろ、そういった視点で受け入れられることによって、普段メタルやヘヴィな音楽を聴かない層にまで届いてほしい……そう思わずにはいられません。
▼SIAMESE『HOME』
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