THE ALLMAN BROTHERS BAND『SHADES OF TWO WORLDS』(1991)
1991年7月2日にリリースされたTHE ALLMAN BROTHERS BANDの10thアルバム。日本盤は同年8月23日発売。
1989年に再結成を果たし、翌1990年に再始動後初のアルバム『SEVEN TURNS』をEpic Recordsから発表。今作はその再結成アルバムから1年という短いスパンで届けられた、トム・ダウドのプロデュースによる充実作です。
序盤は「End Of The Line」「Bad Rain」と比較的シンプルな楽曲で固められていますが、M-3「Nobody Knows」は彼ららしいインプロビゼーションをたっぷりフィーチャーした11分にもおよぶ大作。ディッキー・ベッツ(Vo, G)と再始動から加入したウォーレン・ヘインズ(G)の、それぞれの個性が際立つプレイは圧倒的の一言で、10分超の長尺にもかかわらずまったく飽きることなく、むしろゾクゾクした緊張感を保ちながら楽しむことができます。
一方、アルバム終盤に配置された「Kind Of Bird」はジャズミュージシャンのチャーリー・パーカー(Sax)に捧げられた、ジャズ的アプローチのインストゥルメンタルナンバー。パーカッシヴなリズムとフュージョンを彷彿とさせるギター&キーボードプレイの数々は、カントリーやブルースを通過した「Nobody Knows」とも異なる魅力を放っており、気持ちよく堪能できるはずです。
さらに、アルバムラストを飾るのはロバート・ジョンソンのカバー「Come On In My Kitchen」。ディッキー・ベッツ&ウォーレン・ヘインズによるスライドギタープレイのカッコよさといったら、たまらないものがあります。ブルージーなんだけどソウルフルというアレンジも完璧で、完全に自身のものとして成立させています。
デュエイン・オールマン(G)亡き後、彼を彷彿とさせるようでまったく異なる個性を発揮させるウォーレン・ヘインズのプレイこそ、実は本作最大の聴きどころ。ねっとりしたフレージングやスライドプレイは、ただただ圧倒的の一言で、当時31歳という若手に属する彼に触発されて他のメンバーのプレイも輝きを取り戻している。グレッグ・オールマンのボーカル&オルガンプレイも味わい深さが増しており、フレッシュさと芳醇さが程よくミックスされた、傑作と呼ぶに相応しい仕上がりではないでしょうか。
デュエイン時代の70年代の諸作品はもちろん名盤ばかりですが、聴きやすさという点においては本作こそビギナー向け。ここを入り口に、70年代の名作たちに手を出してみてはいかがでしょう。
▼THE ALLMAN BROTHERS BAND『SHADES OF TWO WORLDS』
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