カテゴリー「2022年の作品」の176件の記事

2024年6月 3日 (月)

JESSIE BUCKLEY & BERNARD BUTLER『FOR ALL OUR DAYS THAT TEAR THE HEART』(2022)

2022年6月17日にリリースされた、ジェシー・バックリーバーナード・バトラーのコラボアルバム。日本盤未発売。

ジェシー・バックリーは2018年公開の映画『ワイルド・ローズ』での主人公ローズ役を務めたほか、2021年公開の映画『ロスト・ドーター』では主人公ラダの若き日を演じアカデミー賞をはじめとする数々の映画賞を受賞したことで知られるアイルランド出身の女優。『ワイルド・ローズ』ではカントリー歌手を夢見るシングルマザーという設定もあり、劇中での歌唱も話題となりました。

一方、バーナード・バトラーはSUEDEの初期メンバーとしてはもちろん、ソロアーティストや音楽プロデューサーとしても名を馳せる名手。互いに接点はないように映りますが、ジェシーはかつてバーニーがプロデュースしたサム・リーのアルバムを聴いていたといい、バーニーも先の『ワイルド・ローズ』でのジェシーの歌唱を耳にしており、互いに高く評価し合っていました。そんな中、ジェシーのマネージャーが2人が対面する機会を設け、同じ精神性を持っていた2人は次第に距離を縮めていき、気づけば音楽的コラボレーションへとつながっていったわけです。

バーニーのプロデュースのもと制作された本作は、深みを強く感じさせるジェシーのボーカルを最良の形で生かした、アコースティックサウンド主体の内容。バーニーはギターのみならず、一部の楽曲ではピアノやドラムまでもを担当し、レコーディングの指揮をとります。また、シンガーでもあるバーニーですが、主役はあくまでジェシーということで彼自身は数曲でコーラスを担当するのみ。コラボ作ではあるものの、彼はあくまでプロデューサー/プレイヤーとしての共作であると認識しているようです。

ダフィー以降、バーニーが手がけてきた「夜の香りがする」アダルトなサウンドアレンジと、アコギやアップライトベース、チェロやバオイリン、トランペットやホルンなどのアコースティック楽器を主体とした音作りは、その後制作されるバーニー自身のソロアルバム『GOOD GRIEF』(2024年)との共通点も多く見つけられます。楽曲自体はそのバーニーの持ち味のひとつであるフォーキーさやジャジーさを強調したものが多く、そうしたテイストがジェシーの歌声にもぴったりハマっている。そのプロデューサーとしてのセンスも、さすがバーニーといったところでしょうか。

これをバーニー自身が歌っていたら、きっとより内省的で地味なアルバムとしてこじんまりとまとまっていたかもしれません。しかし、そうならずに適度なゴージャスさも伝わる上質な歌モノ作品として仕上がったのは、バーニー自身の創作する音楽との「距離」の違いが大きいのかなと。自分のための音楽だったら距離が近すぎて、客観的になるのが難しいところもある。しかし、コラボ作とはいえ主役は別のシンガーがいることで、自身のソロ作よりも客観視できる。いくら名プロデューサーとはいえ、さすがにこの「距離」の違いは大きいのではないでしょうか。

まあそんな邪推は置いておいて。本作は非常にクオリティの高い大人のポップスを、存分に楽しむことができる良質な作品集。アコースティック主体のサウンドながらも、「We've Run The Sistance」のようにダイナミックさが強調された楽曲も用意されているので、全12曲/約50分を退屈することなく楽しめるはず。ジェシーの知名度も大きいとは思いますが、本作が全英23位、スコットランドで8位、アイルランドで35位という好記録を残したのも納得です。

 


▼JESSIE BUCKLEY & BERNARD BUTLER『FOR ALL OUR DAYS THAT TEAR THE HEART』
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2023年2月27日 (月)

MEGADETH『DELIVERING THE GOODS』(2023)

2023年2月17日にリリースされたMEGADETHのデジタルシングル。

この曲はJUDAS PRIESTが“ロックの殿堂”こと『Rock & Roll Hall Of Fame』に選出されたことを記念して、MEGADETHがプリーストへのリスペクトを込めてレコーディングしたもの。昨年11月にAmazon Musicなど一部配信サービスで限定公開されていましたが、このタイミングでApple MusicやSpotifyなど大手プラットフォームでも配信がスタートされました。

ご存知のとおり、「Delivering The Goods」はプリーストの5thアルバム『KILLING MACHINE』(1978年)のオープニングを飾る名曲。プリーストがヘヴィメタルバンドと呼ばれるようになるギリギリのタイミングに制作された1曲ですが、ギターリフの鋭さやヘヴィだけどしなやかなリズムワークにはその後の片鱗を存分に感じ取ることができ、これがのちの『BRITISH STEEL』(1980年)に収録されていたとしても違和感ゼロ。うん、名曲ですね。

MEGADETHによるカバーバージョンは聴いていただけばわかるように、ダウンチューニングでレコーディングされたもの。あくまで『Rock & Roll Hall Of Fame』選出を祝福するためのリスペクトカバーであるため、演奏やアレンジに関しては原曲から大きく外れておらず、サウンドからMEGADETHらしさを存分に感じられるかと言われるとちょっと微妙かな(個人的には原曲よりちょっとBPMを落としたところは減点対象)。

ただ、デイヴ・ムステイン(Vo, G)という唯一無二の個性的な歌声を持つシンガーが歌うことで、間違いなく“MEGADETHの楽曲”として成立しており、そこは安心感を持って楽しめるはず。中盤のギターソロに関しても大佐(デイヴ)とキコ・ルーレイロ(G)が弾き分けていると思いますが、正直どっちがどっちかはわかりません(原曲のメロディを尊重したプレイなのも大きいか)。

MEGADETHは初期から定期的にカバー曲を発表しておりますが、その選曲は比較的王道感の強いものばかりで、その傾向は活動後期に進むにつれて強まっている気がします。最新アルバム『THE SICK, THE DYING... AND THE DEAD!』(2022年)ではDEAD KENNEDYS「Police Truck」とサミー・ヘイガー「This Planet's On Fire (Burn In Hell)」という、だいぶわかりやすい名曲をピックアップしていますから。そういった意味でも、今回のプリーストカバーも選曲/内容含めど直球すぎやしないか?と思った方は少なくなかったはずです。

各プレイヤー陣の個性を強く反映させたカバーをセレクトするよりも、純粋に自分(=デイヴ)のルーツ、しかもそれはNWOBHMみたいなバンドとしてのルーツではなくて、デイヴ個人の音楽人生における原点を振り返るようなもので、それはそれでMETALLICAとは違って面白いと思います。もしMEGADETHがカバーアルバムを制作したら、かなりわかりやすい内容になるんじゃないかな……なんてことも想像できてしまうこの1曲。微笑ましさ満載の内容です。

 


▼MEGADETH『DELIVERING THE GOODS』
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2023年2月15日 (水)

TALAS『1985』(2022)

2022年9月23日にリリースされたTALASの3rdスタジオアルバム。

デヴィッド・リー・ロスにフックアップされたことで、メタル界隈から外に向けても知名度が高まっていったビリー・シーン。その後、MR. BIGでの成功によってさらにその名前を広めることになりますが、そのビリーの原点がTALASというバンド。本作は名曲「Shy Boy」が収録された2ndアルバム『SINK YOUR TEETH INTO THAT』(1982年)から実に40年ぶりのスタジオアルバムとなります。

バンドは1986年、ビリーのDAVID LEE ROTH BAND入りを機に解散していますが、その後もビリー(B, Vo)、デイヴ・コンスタンティーノ(Vo, G)、ポール・ヴァルガ(Dr, Vo)の初期編成で何度か再結成ライブを行ってきました。しかし、本作の制作メンバーはそのトリオ編成ではなく、初のライブアルバム『LIVE SPEED ON ICE』(1984年)録音時のカルテット編成……ビリー、フィル・ナロ(Vo)、マーク・ミラー(Dr)、ミッチ・ペリー(G)が元になっています。

2017年夏にビリー、フィル、マーク、そしてミッチの代わりにキア・ナジョフスキ(G)を加えた布陣でTALASは再結成ライブを行いましたが、この4人で1985年頃に着手していた楽曲を正式にレコーディングして、第2期編成初のスタジオアルバムを完成させるのです。

当時制作してた楽曲をほぼそのまま、新たに味付けすることなくレコーディングした結果、そこで表現されているスタイルは“あの頃”のTALASそのもの。疾走感の強いハードロックチューンからソウルミュージックからの影響が強いポップロックなど、初期2作のスタジオ作にも通ずる作風はタイトルの『1985』に偽りなしの、40年という長い空白をまったく感じさせない良質なハードロック作品に仕上がっています。

実はボーカルのフィル、2020年に舌癌が発症し、残念ながら制作途中の2021年5月2日にこの世を去っています。しかし、幸いなことに亡くなる前にボーカルトラックはすべて録り終えており、あとはビリーを中心に作品としてまとめるだけにとどまりました。

アルバムには1985年当時の楽曲に加え、すでに『LIVE SPEED ON ICE』にライブバージョンで収録されていた「Inner Mounting」や「Crystal Clear」「Do You Feel Any Beter」もスタジオ再録。加えて、本作のために新たにパワーポップテイストのミディアムチューン「Black & Blue」、フィル逝去後にビリーが録音したインスト「7lHd h」、日本盤のみのボーナストラックとしてニーナ・シモンのバージョンで知られる「Don't Let Me Be Misunderstood」(邦題「悲しき願い」)のカバーも加わり、TALASとしての集大成感が強い内容。レコーディングには先の4人のほか、第2期ギタリストのミッチ・ペリーもゲスト参加していることからも、その色合いがより強く感じられます。

ビリーらしいインタープレイも随所に散りばめられていますが、なんといってもこのバンドらしい“モサい”B級感健在の楽曲群が非常に優れており(どんな表現だよ)、TALASに一度でも触れたことがあるリスナーなら納得の1枚ではないでしょうか。これを機に、ぜひ往年の作品もサブスクで解禁してもらいたいものです。

 


▼TALAS『1985』
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2023年2月 6日 (月)

CANDLEMASS『SWEET EVIL SUN』(2022)

2022年11月16日にリリースされたCANDLEMASSの13thアルバム。

オリジナル作としては前作『THE DOOR TO DOOM』(2019年)から3年9ヶ月ぶり、初代ボーカリストのヨハン・ラングクイスト(Vo)が復帰して2枚目のスタジオアルバム。『THE DOOR TO DOOM』を携えたワールドツアーでは、2016年の『LOUD PARK 16』以来となる初の単独来日公演も東京&大阪で実現し、その圧巻のステージが絶賛されました。

コロナ禍を挟んで届けられた本作は、成功を収めた『THE DOOR TO DOOM』の延長線上にある作風。言ってしまえば、変わりようのなダークでドゥーミーなヘヴィメタル満載の1枚なわけです。どこかロニー・ジェイムズ・ディオをイメージさせるヨハンの歌声は、決して声域が広いわけではありませんが、そのおどろおどろしさと仰々しさを併せ持つ歌唱スタイルはBLACK SABBATH直系のエピカルなドゥームメタルとの相性が抜群なのです。

オジー・オズボーン期のサバスとディオ期のサバス、それぞれの良い面を抜き出して、北欧メタルバンドらしい(良い意味での)アンダーグラウンド感と叙情的な側面を随所に散りばめた楽曲たちは、ヘヴィメタルというジャンルに多少なりとも心を奪われたことがあるリスナーなら絶対にハマるはず。特に「Angel Battle」や「Black Butterfly」のような起伏に富んだアレンジを持つ楽曲は、メタルリスナーなら嫌いになれるわけがないですからね。

スピードよりも重さを追求したミドルチューンの数々は、どれも似たタイプではあるんだけど、ボーカルやギターの多彩さでしっかり差別化ができているし、5〜6分前後と決して短くはない尺の中でもさまざまな変化が付けられている。本作最長(約7分40秒)の「Devil Voodoo」で見せる展開の数々も、このバンドらしいドラマチックさが伝わり好印象。なもんだから、全10曲/約54分を退屈することなく最後まで楽しむことができます。

40年近くにわたり、ひとつのスタイルにこだわり続けたCANDLEMASSの姿勢は、もはや伝統芸能そのもの。“進化”よりも“深化”にこだわり続けた結果、到達することができた本作は至高の1枚と呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。

 


▼CANDLEMASS『SWEET EVIL SUN』
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2023年2月 5日 (日)

THE 1975『BEING FUNNY IN A FOREIGN LANGUAGE』(2022)

2022年10月14日にリリースされたTHE 1975の5thアルバム。邦題は『外国語での言葉遊び』。

全英1位、全米4位を記録した前作『NOTE ON A CONDITIONAL FORM』(2020年/邦題は『仮定形に関する注釈』)から2年5ヶ月ぶりの新作。本国イギリスでは5作連続1位を記録したほか、オーストラリアやスコットランド、アイルランドでも1位、アメリカでは最高7位という好成績を残しています。また、ここ日本でも8月開催の『SUMMER SONIC 2022』ヘッドライナー公演後ということもあり、オリコンアルバムチャートで最高12位(合算チャートでも12位)と過去最高記録を達成しました。

前作『NOTE ON A CONDITIONAL FORM』は全22曲/計82分というCDの収録容量記録を大きく塗り替えつつ、時代に即した“プレイリスト”的な作風で好評を博しましたが、続く今作は全11曲/約43分という前作の半分近いボリューム。これを「スケールダウンした」「以前よりも創作欲が落ちたのでは」とマイナス評価する方も少なくないでしょうが、そもそもこの2作は作品集として方向性が真逆だと思うんです。

1曲1曲を取り上げると、今作で展開されているキャッチーな作風はここ数作の延長線上にあると言えます。かつ、本作では“生”感が復調しており、ロックバンドとしの軸足を“進化”ではなく“深化”にシフトさせることで全体の統一感が強まっている。要は、好きなもの詰め合わせだった前作の“プレイリスト”感が減退し、古き良き時代の“アルバム”感を取り戻しているわけです。なもんですから、前作とは受ける印象も異なるわけです。

全英&全米1位を獲得した2作目『I LIKE IT WHEN YOU SLEEP, FOR YOU ARE SO BEAUTIFUL YET SO UNAWARE OF IT』(2016年)以降、ロックバンドとしての革新的側面と実験性を強めていったTHE 1975ですが、その実験性はRADIOHEADあたりが試みたコアなものではなく、あくまで「ポップミュージック」が大前提として存在していた。その大衆性をここまで失うことがなかったから、こういった王道感の強いスタイルにも自然な形で立ち返ることができるわけです。

いろんな経験を積み重ねた結果、本作で制作された楽曲たちはフレッシュさよりもほろ苦さを感じさせるものが多く、デビューからの10年で彼らが得たもの/失ったものがストレートに表現されています。しかし、彼らなりにストレートに表現してはいるものの、聴き手側からしたら意外と入り組んだ構造に映り、時にその印象がプログロック/ポンプロックと重なる瞬間すら見受けられる。世が世なら旧世代的AORと切り捨てられそうなこのスタイルも、シーンが何周もまわった2022〜23年だからこそ新鮮なものとして受け取ることができる。良い時代になったものです。

はたから見たら紛い物の工業製品に映るかもしれないけど、間近で見たら純度100%の手作りだとわかる。最先端なんだけど、実は懐かしさ満載で細かいところにまで手が行き届いていることにも気付かされる。そんなアンバランスさを持つ本作は、“イマドキ”の“ナウ”なロックアルバムではないでしょうか。そりゃ嫌いになれるわけないし、積極的に好きだと言いたくなりますわ。

 


▼THE 1975『BEING FUNNY IN A FOREIGN LANGUAGE』
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2023年2月 3日 (金)

THE CURE『WISH』(1992)

1992年4月21日にリリースされたTHE CUREの9thアルバム。日本盤は同年4月22日発売。

全米2位の大ヒットを記録した「Lovesong」を含む前作アルバム『DISINTEGRATION』(1989年)が、全英3位/全米12位(200万枚以上の売り上げ)という好成績を残し、前々作『KISS ME, KISS ME, KISS ME』(1987年)からいい流れを築き上げてきたTHE CURE。その数字的な成績という点で、続く今作では初の全英1位、アメリカでも最高2位と過去最高記録を打ち立てます。

過去2作でゴシックロック路線よりもUSオルタナティヴロック寄りのサウンド/アレンジへとシフトしてきた彼らでしたが、今作ではその振り切り方がより強くなった印象を受けます。それは、世の中的にグランジのようなオルタナロックが受け入れられていたことも大きく作用したのでしょう。「Apart」のような楽曲では従来のゴシックテイストに、グランジ的なダークさが見事な形でミックスされており、いろんな意味でステージがひとつ上がった印象を受けます。

もちろん冒頭を飾る「Open」を筆頭に、「High」(全英8位/全米42位)や「Friday I'm In Love」(全英6位/全米18位)といったヒットシングルなど、キャッチーさも絶妙なバランスで保ち続けている。かつ、「From The Edge Of The Deep Gree Sea」ではダークなドリームポップ的な側面も見え隠れし、「Trust」では耽美さをより強調したスローアレンジが楽しめる。従来のらしさをよりモダンにシフトさせた「A Letter To Elise」、ダンサブルなビートにシューゲイズ的色合いを加えた「Cut」など、どの曲も非常にクセが強いのに親しみやすい。約66分と非常にボリューミーな内容ながらも最後まで飽きずに楽しめる、黄金期にふさわし1枚です。

THE CUREは以降も良質な作品を発表し続けていますが、個人的にもっとも興味を持って触れていた彼らの新譜はここまでかな。80年代後半から90年代初頭の、多感な時期に触れた3作品(『KISS ME, KISS ME, KISS ME』、『DISINTEGRATION』、そして本作)に対する思いは、今でもかなり強いものがあります(もちろん初期の作品も、後期の作品も好きという前提です)。

なお、2022年11月25日には本作のリリース30周年を記念した最新リマスター盤と、未発表音源集を付属した3枚組デラックスエディションが同時発売。2018年にはすでに編集作業は完了していたようですが、非常にクリアで音の分離が素晴らしいリマスター盤は必聴ですし、完成形へと至るまでの苦心が見えるアルバム収録曲のデモ音源や、1993年に発表されたインスト中心の『LOST WISHES EP』収録音源なども、『WISH』という傑作を振り返る上では非常に重要なアイテムと言えるでしょう。まずはリマスタリングされた本編をじっくり楽しんでから、その魅力を補強する形でボーナストラックに触れてみてください。

 


▼THE CURE『WISH』
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2023年1月19日 (木)

BLIND CHANNEL『LIFESTYLES OF THE SICK & DANGEROUS』(2022)

2022年7月8日にリリースされたBLIND CHANNELの4thアルバム。日本では本作がデビュー作にあたり、同年12月21日に『シック・アンド・デンジャラス』の邦題で発売。

BLIND CHANNELはフィンランド北部にあるオウルという街出身のニューメタルバンド。ラッパーだったニコ・モイラネン(Vo)とメタルバンドに憧れを抱いていたヨエル・ホッカ(Vo)という10代の少年2人がLINKIN PARKの2ndアルバム『METEORA』(2003年)を通じて出会い、2013年のバンドをスタートさせます。翌年、にフィンランドで開催された『Wacken Metal Battle』を勝ち抜き、レーベル契約を獲得。数枚のシングルリリースを重ね、2016年9月に1stアルバム『REVOLUTION』を発表し、本国チャートで26位という好成績を残します。

その後も『BLOOD BROTHERS』(2018年)、『VIOLENT POP』(2020年)とアルバムを連発する中、2020年夏にはかつて「Timebom」(2019年)にゲスト参加したアレクシ・コーニスベシ(DJ)が正式メンバーとして加入。新たに6人組編成になったバンドは、ヨーロッパ最大の音楽の祭典『Eurovision Song Contest 2021』にフィンランド代表として参加し、今作にも収録された「Dark Side」で6位入賞を果たした。ちなみに、このコンテストで優勝したのがイタリア代表のMÅNESKIN。彼ら同様、BLIND CHANNELもこの『Eurovision Song Contest』入賞で世界各国から注目を集めることとなります。

このコンテスト出場と前後して、彼らは新たなレーベルとしてCentury Media Recordsと契約。翌2022年夏に満を持して発表された本作は、本国チャートで初の1位を獲得しています。そして、海外から遅れること約半年、アートワークを変更して日本盤が発売されたわけです。

年末の慌ただしい時期のリリースだったこともあり、スルーされてしまいがちですが、特に日本のメタル/ラウド系リスナーがそのまま見過ごしてしまうには勿体ない1枚。結成のきっかけとなったLINKIN PARK直系の2000'sニューメタルの香りがプンプンする、ヘヴィでグルーヴィー、そしてポップでキャッチーな楽曲がズラリとならぶ良作なのです。

先にも触れた「Dark Side」は本国1位、イギリスでも最高66位という成績を残した王道感の強い1曲。メロディアスな主メロとパーカッシヴなラップパート、そしてサビではシンガロングしたくなるようなキャッチーなメロディが用意されており、演奏も歌を盛り立てるための無駄のないアレンジが施されている。「Bad Idea」(フィンランド5位)や「Balboa」(同12位)、「We Are No Saints」(同18位)などのヒットシングルはどれもが高性能のポップ/ロックソングとして機能するものばかりで、ラウド系以外のリスナーにもしっかり響く個性を持っている。かつ、大半の楽曲が3分前後と非常にコンパクトで、歌に主軸を置いていることから終始飽きさせないアレンジでかっちり作り込まれている。そりゃ売れるわけだ。

個人的には「Alive Or Only Burning」が大のお気に入り。日本盤にはWE CAME AS ROMANSなどのと共演経験を持つラッパーのZero 9:36をフィーチャーした別バージョンも、ボーナストラックとして用意されています。こっちの新バージョンもなかなか良いのではないでしょうか。

目新しさはないものの、完成度だけは無駄に高い。本国ではすでに7000人規模のアリーナ会場を満員にするほどの人気ぶりで、日本でもフェス出演などがあればより知名度が広まるはず。ここでの成功経験を糧に、さらに進化する可能性の高い将来有望株の1組です。

 


▼BLIND CHANNEL『LIFESTYLES OF THE SICK & DANGEROUS』
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2023年1月15日 (日)

✝✝✝ (CROSSES)『PERMANENT.RADIANT』『ONE MORE TRY』(2022)

『PERMANENT.RADIANT』(2022)

2022年12月9日にリリースされた✝✝✝ (CROSSES)の最新EP。日本盤未発売。

2022年3月に発表されたデジタルシングル『INITIATION / PROTECTION』に続く新作は、事前の予告どおり“まとまった作品集”でしたが、期待された2ndアルバムではありませんでした。しかし、6曲のオリジナル曲を収めたボリューミーな内容となると、それこそ1stアルバム『✝✝✝』(2014年)以来約9年ぶりなので、ファンとしてはありがたい限りです。

2023年に予定されている待望の2ndアルバムへの序章として用意された本作は、『INITIATION / PROTECTION』で見せたゴシックテイストの80'sエレポップ/ダークロックをモダンな形に昇華させた内容。「Sensation」や「Vivien」はヘヴィなぎたーサウンドの代わりにシンフォニックなシンセサイザーを多用することで、DEFTONESとは似て非なる楽曲に仕上がっています。それこそ、「Cadavre Expuis」あたりは冒頭のギターフレーズなど含め、ヘヴィな味付けを加えればそのままDEFTONESの新曲としても通用する内容。そう考えると、いかにチノ・モレノ(Vo)のシンガー/ソングライターの個性が唯一無二のものであるかが、この曲からも十分に理解することができます。

独特のコード使いとそれに伴う不思議なメロディ運びは、どことなく後期JAPANあたりを彷彿とさせ、音作りの質感にはNINE INCH NAILSあたりとの共通点も見受けられる。そして、「Day One」や「Procession」のような楽曲からは80年代のニューロマンティックの香りも嗅ぎ取ることができ、その方向性がまったくブレていないことにも気付かされる。特に「Procession」にはトリップホップからの影響も見受けられ、思わずニヤリ。来たる2ndアルバムへの期待を煽るには十分すぎる内容ではないでしょうか。

 


▼✝✝✝ (CROSSES)『PERMANENT.RADIANT』
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『ONE MORE TRY』(2022)

 

本作リリースから2週間後の12月23日には、EP未収録曲「One More Try」もデジタルリリース。この曲はジョージ・マイケルの1stアルバム『FAITH』(1987年)に収録された名バラードのカバー。原曲のイメージそのままに、讃美歌を思わせる神聖さを強調したアレンジはさすがの一言といえるのでは。チノのボーカルワークもジョージ・マイケルを踏襲したもので、彼ほどのソウルフルさはないものの十分に個性が発揮された良カバーと言えます。

また、音使いのいたるところにはプリンスからの影響も見受けられます。これまでDEFTONESやこのプロジェクトでカバーしてきたアーティストのセレクトを考えると、これまでプリンスを取り上げていないのが不思議なくらい。けど、チノの色を考えるとジョージ・マイケルくらいまでがギリギリなのかな?とも思ったり。なんにせよ、あえてEPには入れずクリスマスシーズンに単独リリースを意識していたんだろうなという意図が透けて見える本作、先の『PERMANENT.RADIANT』とあわせて語られるべき良質なトラックです。

 


▼✝✝✝ (CROSSES)『ONE MORE TRY』
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2023年1月 4日 (水)

2022年総括

仕事始めのタイミングになりましたので、例年より数日遅いですが2022年のまとめ記事をアップしておきます。

昨年は「アルバム/シングル/楽曲と枠にこだわらず、20作品に縛る」形でまとめ、別途「HR/HM、ラウド編」で別エントリーを作っていましたが、今年はもうそういう枠を全部取っ払って(ジャンル分け面倒くさい)ひとつのエントリーに包括し、「ジャンル/アルバム/シングル/楽曲と枠にこだわらず、30作品に縛る」という形にさせていただきました。これなら一般総括の20作品の中からあえてメタル系を外したり入れたりと悩まなくて済むしね。

というわけで特に順位付けをせずアルファベット→50音順で30作品、掲載していきます。

 

Afterglow『独創収差』(楽曲)

 

ARCHITECTS『the classic symptoms of a broken spirit』(アルバム/レビュー

 

asmi「PAKU」(楽曲)

 

DEF LEPPARD『DIAMOND STAR HALOS』(アルバム/レビュー

 

Foi『HER』(アルバム)

 

GREYHAVEN『THE BRIGHT AND BEAUTIFUL WORLD』(アルバム/レビュー

 

THE HELLACOPTERS『EYES OF OBLIVION』(アルバム/レビュー

 

Ho99o9『SKIN』(アルバム/レビュー

 

IBARAKI『RASHOMON』(アルバム/レビュー

 

ITHACA『THEY FEAR US』(アルバム/レビュー

 

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2023年1月 3日 (火)

a-ha『TRUE NORTH』(2022)

2022年10月21日にリリースされたa-haの11thアルバム。日本盤は同年10月26日発売。

2014年に再々結成を果たしたa-haの、前作『CAST IN STEEL』(2015年)から7年ぶりの新作。新たにソニー系列のRCA Recordsと契約しての1作目にあたり、本国ノルウェーで最高3位、イギリスでは12位とそれなりの成功を収めています。

ここ日本では昨年5月にドキュメンタリー映画『a-ha THE MOVIE』が公開され、再注目を集めるきっかけを作ることに成功。コロナさえなければ1stアルバム『HUNTING HIGH AND LOW』(1985年)を再現する来日公演も実現していたはずなのですが、そこだけはどうにもなりませんでした。

ただ、そうしたコロナの喧騒下において、ノルウェーのオーケストラ・Arctic Philharmonicとの全面的コラボレーションによるレコーディングが実現。a-haというバンドが持つ繊細でおおらかなサウンド/メロディがオーケストラとの共演により、さらに端的に表れた良質なポップアルバムを完成させるに至りました。

80年代に青春時代を過ごし、「Take On Me」のイメージを強く持つ浅いリスナーにとっては「a-ha=エレポップ」の印象しかないのかもしれません。しかし、彼らの本質は「Hunting High And Low」や「Manhattan Skyline」「Stay On These Roads」に代表される、壮大で美しくメロディアスな楽曲にあると個人的には思っており、近年の作品はその側面を強く打ち出した極上のポップソングを増産している印象がありました。それこそ、『MTV UNPLUGGED: SUMMER SOLSTICE』(2017年)はそのテイストが抜群の形で発揮された良作だと捉えています。

そんなわけですから、オーケストラとのコラボレーションで生み出された本作。悪いわけがありません。オープニングを飾る「I'm In」からして派手さは皆無ですが、その穏やかな空気の中にも起伏に富んだメロディがしっかり存在し、独特のうねりを生み出している。また、随所にエレクトロの味付けも散りばめられており、タイトルトラック「True North」のように生音とエレクトロが抜群のバランスで混在している良曲も存在する。テンポ感的には終始穏やかさが保たれているものの、その中で機微な波もしっかり感じられる。特に、アルバム後半に進むにつれて「Bumblebee」や「Forest For The Trees」などのドラマチックな楽曲、「Make Me Understand」をはじめとする往年のエレポップテイストが若干感じられる曲も用意されており、最後まで飽きさせない構成となっています。

全体的に地味めで派手な要素は皆無。もはや彼らにそういった要素を求めることはありませんが、ポップ職人らしい徹底的に作り込まれた良質なアルバムは文句なしの1枚ではないでしょうか。

 


▼a-ha『TRUE NORTH』
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Williams AA= AAAMYYY ABBA Abbath AC/DC Acacia Strain, the Accept Ace Frehley Adam Lambert Adrian Younge Aerosmith AFI After the Burial Afterglow Ahab aiko Air (France) AIR (Japan) AKB48 ALAZEA Alcatrazz Alcest Aldious Alexisonfire Alice Cooper Alice in Chains Alicia Keys Allman Brothers Band, the Almighty, the Alter Bridge Altitudes & Attitude Amaranthe American Head Charge American Hi-Fi Amorphis Anaal Nathrakh Anaïs Anchoress, the Anderson .Paak Andrew W.K. 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