GHOSTEMANE『ANTI-ICON』(2020)
2020年10月21日に配信リリースされたGHOSTEMANE(ゴーストメイン)の8thアルバム。フィジカルでは同年12月18日にアナログ盤のみ発表、日本盤未発売。
昨日紹介したUNDERØATHの最新作『VOYEURIST』(2022年)にて、「Cycle」という楽曲にフィーチャリングされていたGHOSTEMANE。同名義やエリック・ゴーストなどの通り名を使用する彼は、2010年頃から音楽活動を開始し、2014年にはミックステープを発表しているようです。フルアルバムのほかに多数のEPやコンピレーションアルバム、ILL BIZやGASM、SWEARRとしても作品を発表しています。
そのサウンドはヒップホップやトラップミュージックのみならず、ハードコアやブラックメタル、ドゥームメタル、インダストリアルメタルなど“こちら側”との親和性が高いもので、今回紹介する『ANTI-ICON』というアルバムもトラップを通過したポストハードコア/インダストリアルメタルという印象の、リズムに特化したエクストリームミュージックが展開されています。
全体を通して感じられるのは、90年代半ばから後半にかけてのNINE INCH NAILSやマリリン・マンソンなどのインダストリアル寄りのオルタナティヴメタルではないでしょうか。そこにラップボーカルが乗ることで現代的なスタイルと受け取ることができますが、聴く人が聴けば「懐かしい!」と感じる作品かもしれません。
例えば、「Hydrochloride」で聴くことができるアンサンブル/アレンジは『BROKEN』(1992年)や『THE DOWNWARD SPIRAL』(1994年)の頃のNINを彷彿とさせるし、「Anti-Social Mascochistic Rage [ASMR]」でのドープな作風は『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996年)や『MECHANICAL ANIMALS』(1998年)期のマンソンと重なるものがある。そこに「AI」などを筆頭とした重低音を強調させたモダンなサウンドメイクが加わることで、単なる過去の焼き直しでは済まされない刺激を体験することができるわけです。
また、「Melanchoholic」などで見せるムーディーかつダークなボーカルも彼の持ち味のひとつで、それこそトレント・レズナーがもっとも繊細だった時期のボーカルとリンクするものがある。また、「The Winds Of Change」や「Falling Down」のようにアコギをフィーチャーした楽曲も含まれており、こういったゴシック調ナンバーで見せる艶やかさは本当に往年のNINと重なるものがあります。これはたまらんですわ。
アートワーク(特にジャケットで掲げた鉄仮面を実際に被った裏面)のカッコよさ含め、ぜひメタル系リスナーにまで届いてほしい1枚。ヒップホップに対していまだに偏見を持っている方なら、なおさら本作に触れていただきたいものです。
なお、現時点での最新作EP『FEAR NETWORK II』(2021年)もメタル/ラウド系リスナーに響く内容ですので、あわせてチェックしてもらえるとうれしいです。
▼GHOSTEMANE『ANTI-ICON』
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