KISSIN' DYNAMITE『NOT THE END OF THE ROAD』(2022)
2022年1月21日にリリースされたKISSIN' DYNAMITEの7thアルバム。日本盤は同年1月19日に先行発売。
今年で活動開始から15年という、中堅を超えてベテランバンドに仲間入りしそうなキャリアを持つドイツのヘアメタルバンド。Napalm Records移籍第1弾となった前作『ECSTASY』(2018年)から3年5ヶ月ぶりの新作は、オリジナルメンバーのアンディ・シュニッツァー(Dr)からセバスチャン・バーグ(Dr)へとメンバーチェンジして初のアルバムとなります。すでに本国ドイツでは2位と、過去最高の数字を打ち出しています。
このバンドに対してそこまで詳しいわけでもなく、アルバムもすべて聴いているという熱心なリスナーではないのですが、そういったライト層的視点から述べさせてもらうと、今作は過去のアルバムほど“ドギツさ”が強くないかなと。良く解釈すれば「大人になった」、悪く解釈すれば「大人しくなった」という、聴き手の立ち位置によって評価の分かれる1枚ではないでしょうか。
MVは相変わらずいかがわしさ満載ですが、音楽面ではいわゆるヘアメタル/グラムメタル的な要素は薄れ、タフなハードロックバンドとしての側面が強調された作風にシフト。単純にバンドとして成長したということなのか、あるいは現在のようにロックバントにとってタフさが求められる状況に対しての宣戦布告なのか。どちらにせよ、2020年代という新たなディケイドとどう戦っていくかが問われる中で産み落とされた、勝負作であることには間違いありません。
アルバム冒頭を飾るタイトルトラック「Not The End Of The Road」におけるメッセージ性の強さ、硬質さが強調されたサウンドメイクなどは素直にカッコいいですし、複数のゲストボーカルを迎えたゴスペルチックなミディアムバラード「Good Life」も極上の仕上がりだと思います。この変化、POISONが3作目『FLESH &BLOOD』(1990年)や続く4作目『NATIVE TONGUE』(1993年)で彼らが迎えたものと似た印象を受けました。
かと思えば「Yoko Ono」という皮肉に満ちた楽曲も用意されていたり、歌詞の面では従来の彼ららしい「No One Dies A Virgin」みたいなアップチューンも存在する。かつての“らしさ”を完全に捨て切ったわけでもなく、そのへんもPOISONと共通するものがあるような気がします。
12曲/約49分という尺に対してバラードタイプのミディアムナンバーが4曲(「Good Life」「Coming Home」「Gone For Good」「Scars」)は比較的多めに映りますが、全体的に楽曲のバラエティに富んでいることもあり、最後まで飽きずに楽しむことができる。かつ、日本盤によくありがちなボーナストラックを含まない構成なので、そこも個人的には好印象です。個人的には上で挙げたような楽曲に加えてラスト2曲、グルーヴィながらも情熱的なメロディが印象的なハードロックチューン「Voodoo Spell」とアーシーなバラード「Scars」がお気に入り。このバンドの本流とはちょっと異なるタイプかもしれませんが、曲が良ければすべてよし。そこまで熱心なリスナーではないので、これはこれでアリだと思っています。
この変化が吉と出るか凶と出るのか。チャート的には成功を収めたようですが、もしかしたら次のアルバムでまたいかがわしい路線に回帰していたら、それはそれかな(笑)。とにかく、これはこれで良質なメロディアスハードロックアルバムとしてプッシュしておきます。
▼KISSIN' DYNAMITE『NOT THE END OF THE ROAD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)