EDDIE VEDDER『EARTHLING』(2022)
2022年2月11日にリリースされたエディ・ヴェダー(PEARL JAM)の3rdソロアルバム。
昨年8月にはキャット・パワーやアイルランドの詩人グレン・ハンサードとのコラボレーションによる映画『FLAG DAY』のオリジナル・サウンドトラックも制作していますが、純粋なソロアルバムは意外にも『UKULELE SONGS』(2011年)以来10年ぶりの新作。特にここ数年はPEARL JAMの新作『GIGATON』(2020年)もあったので、コロナ禍ながらも精力的なリリースが続いている印象です。
本作のプロデュースを手がけたのは、オジー・オズボーンの最新作『ORDINARY MAN』(2020年)でのタッグも話題になったアンドリュー・ワット(そのほかにポスト・マローンやマイリー・サイラス、ジャスティン・ビーバーなど)。レコーディングにはそのアンドリューのほか、チャド・スミス(Dr/RED HOT CHILI PEPPERS)やジョシュ・クリングホッファー(G, Key, Vo/ex. RED HOT CHILI PEPPERS)、スティーヴィー・ワンダー、リンゴ・スター、エルトン・ジョンなど豪華な布陣が参加しています。もはやメインストリームのロック/ポップスターらしいメンツと言えるのではないでしょうか。
サウンド的には非常にメジャー感の強いアメリカンロックが中心。アルバム冒頭を飾る「Invincible」や「Power Of Right」などからはニューウェイヴの流れを汲むアリーナロック的な香りも伝わり、その質感はグランジ以前の80's MTVライクなメインストリームロックと重なるものがあります。極端な話ですが、それこそブルース・スプリングスティーンやジョン・メレンキャンプ、ヒューイ・ルイスなどのMTV世代には懐かしいアーティストたちとリンクするものがあるんじゃないかなと。そのへんはPEARL JAMの最新作『GIGATON』にも含まれていた要素のひとつでもあるので、あの色合いはエディによるものだったのかな?と今さらながらに感じています。
良くも悪くも、開き直りが伝わるこのスタイル。昨年12月に57歳になったばかりのエディにとってはもはや「最新のスタイルを作り上げるより、自分の成長期に慣れ親しんだロックを再構築する」ことが活動の主軸なのかもしれません。もちろん、活動のメインにPEARL JAMがあるぶんソロではこういったスタイルを追求することができるわけで、それ自体は否定しません。実際、僕自身も中高生の頃に慣れ親しんだアメリカンロックやMTVで流れていたヒット曲を聴いている感覚で楽しめましたし。
ただ、前作『UKULELE SONGS』はもうちょっと遊び心に満ち溢れていた印象もあっただけに、真の意味で“老いて”しまった感が伝わり、そこだけが残念だったかなと。アルバム自体の完成度が非常に高いだけに……。とはいいつつ、実はエディってもともと“そっち側”の人で、こういったスタイルに回帰するのは実は自然な流れなのかもしれません。
個人的には日中延々とリピートするよりも、たまに聴くぶんには申し分なしな1枚。「あのPEARL JAMのフロントマンによるソロアルバム」という視点ではなく、「純粋に良曲揃いのアメリカンロック&ポップス集」として接するのがベストかな。
▼EDDIE VEDDER『EARTHLING』
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