BLOODYWOOD『RAKSHAK』(レビュー) GREYHAVEN『THIS BRIGHT AND BEAUTIFUL WORLD』(レビュー) MICHAEL MONROE『I LIVE TOO FAST TO DIE YOUNG!』(レビュー) PORCUPINE TREE『CLOSURE / CONTINUATION』(レビュー) SOUL GLO『DIASPORA PROBLEMS』(レビュー)
ZEAL & ARDORはスイス系アメリカ人のマニュエル・ギャノー(Vo, G, Synth)を中心としたアヴァンギャルドメタル・プロジェクト。ブラックメタルにソウルなどのブラックミュージックを掛け合わせた独特の音楽性で注目を集め、1stアルバム『DEVIL IS FINE』(2016年)や続く2ndアルバム『STRANGER FRUITS』(2018年)はトム・モレロ(RAGE AGAINST THE MACHINE)やスラッシュ(GUNS N' ROSES)などから高い支持を得ました。
聴き手の期待を煽るイントロダクション「Zeal & Ardor」を経てスタートする、インダストリアルメタルなどのエクストリームメタルにアフロビートを掛け合わせたような「Run」を筆頭に、ゴスペルチックな質感のモダンメタル「Death To The Holy」、浮遊感の強いブラックゲイズナンバー「Emersion」など、アルバム冒頭からバラエティ豊かな楽曲が並びますが、その曲ごとに実験色の強いミクスチャー感に相反し、不思議と統一性の強さが伝わる仕上がり。個人的には「Emersion」で示された世界観がドツボすぎて、4曲目にして早くもピークを迎えます。
その後もダークなソウルメタル「Golden Liar」、強弱のコントラストがハンパない「Erase」、シンプルなアレンジがクセになるブルースナンバー「Bow」、冒頭のソウルフルさから突如エクストリーム感が増す「Feed The Machine」(この曲や「Erase」のギターワークにはNINE INCH NAILSあたりからの影響も見え隠れします)、目眩く展開と絶叫に次ぐ絶叫がたまらない「I Caught You」、“エクストリームゴスペル”なんて例えが似合いそうな「Church Burns」、グルーヴメタルの進化系「Götterdämmerung」、ドラマチックなメタルブルース「Hold Your Head Low」、“ジャズ、メタル、ブルース”を意味するタイトルとキャッチーな曲調とのアンバランスさにニヤリとさせられる「J-M-B」、“すべての希望は消え失せた(All Hope Is Lost)”という強烈なタイトルでアルバムを締め括る不穏なアウトロ「A-H-I-L」……ここまで1曲ごとにいろんなことにトライしながらも、1枚のアルバムとして起伏に富んだドラマを展開することができるなんて、お見事としか言いようがありません。いやはや、とんでもないアルバムを生み出したものです。