AMORPHIS『HALO』(2022)
2022年2月11日にリリースされたAMORPHISの14thアルバム。
本国フィンランドで通算5作目のチャート1位を獲得した前作『QUEEN OF TIME』から約4年ぶり、15年以上在籍したNuclear Blast Recordsから新たにAtomic Fire Recordsへと移籍しての第1弾アルバム。このAtomic Fire はNuclear Blast創始者マルクス・シュタイガーが2021年秋に発足させた振興レーベルで、すでにHELLOWEEN、OPETH、MESHUGGAH、MICHAEL SCHENKER GROUPなどがNuclear Blastから移籍を発表しているそうです。
レーベル移籍とはいえ、そういった事情は新作制作には特に大きな影響を及ぼしていない模様。むしろ大変だったのは、このコロナ禍でのレコーディング自体だったようで、ベーシックトラックの大半はバンドの拠点であるヘルシンキとお馴染みのプロデューサーであるイェンス・ボグレン(AT THE GATES、THE OCEAN、KREATOR、ANGRAなど)が住むハルムスタットとの間でリモート収録されています。
オープニングを飾る「Northwards」からメロディアスかつドラマチックなデスメタルサウンドは健在で、グロウルとメロウなクリーントーンを交互に繰り出すトミ・ヨーツセン(Vo)の歌唱力/表現力もより深みを増している。グロウルパートに関しては前作『QUEEN OF TIME』以上に比率が高いように感じられ、プログレッシヴな曲展開と相まって独特の存在感が際立つ結果に。個人的にはダイナミックさは前作以上の手応えを感じています。
プログメタルの要素、シンフォニックメタルの要素、そしてメロディックデスメタルの要素が程よいバランスで混在しているのも過去作同様なのですが、特に今作はヘヴィさとメランコリックさにより拍車がかかったことで、前作以上の充実感、満足感を得られるのではないでしょうか。その象徴的な1曲が、タイトルトラックでもある「Halo」。このバンドの魅力が最良の形で凝縮された1曲だと断言しておきます。
また、このバンドならではの民謡の要素も適度なバランスで散りばめられており、特に今回はエキゾチックなオリエンタル要素が「On The Dark Waters」などから伝わります。この曲でのシタール風ギターサウンド/プレイはまさにその特徴的なポイントです。と同時に、サンテリ・カリオ(Key)のオルガンも随所で良い味を出しており、同系統のメロディックデスメタル、シンフォニックデスメタルとも一線を画する個性を発揮しているのではないでしょうか。かと思えば、「War」や「The Wolf」などではより攻撃的なデスメタル要素も用意されており、こういったアグレッシヴさが全体を通して心地よい作風の本作においてフックになっている。特にこの2曲は終盤に配置されていることもあり、気持ちが揺さぶられます。
前作では6〜7分台の長尺曲も複数存在しましたが、今作の楽曲は概ね4〜5分台とこの手のバンドにしてはコンパクトにまとめられているのも良点かな。それは前作よりも1曲多い全11曲(日本盤ボーナストラック除く)収録なのに、トータルランニングは前作とほぼ一緒の約58分という点にも表れており、1曲1曲の構成/メロディが非常に練られていることもあって、最後までスルスルと聴き進められる。個人的にはメロディックデスメタルと捉えるよりも、デスメタルを通過したドラマチックな王道メロディアスヘヴィメタルと呼ぶほうがしっくりくる1枚です。
なお、日本盤はボーナストラック「The River Song」を追加した全12曲を収録。さらに、2018〜19年にヨーロッパで行ったライブからのベストテイクを集めた10曲入りライブアルバム『LIVE IN EUROPE 2018-2019』同梱のデラックスエディションも用意されています。こちらは過去15年の間に発表されたアルバムからのベスト選曲的内容(とはいえ、時期的に『QUEEN OF TIME』から多め)となっており、新作とあわせて聴くことで最近のAMORPHISの傾向を押さえることができるはずです。このライブ盤付き仕様は日本限定発売となっているので(当然サブスクでも未配信)、気になる方はぜひチェックしてみてください。
▼AMORPHIS『HALO』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)