FRANK TURNER『FTHC』(2022)
2022年2月11日にリリースされたフランク・ターナーの9thアルバム。日本盤未発売。
フランク・ターナーはイギリス出身のパンク/フォークSSW。2001年にポストハードコアバンドMILLION DEADのフロントマンとしてデビューし、2枚のアルバムを発表したのちに2005年解散。以降はTHE SLEEPING SOULSと名付けたバックバンドを携え、ソロ名義で音楽活動を続けています。5thアルバム『TAPE DECK HEART』(2013年)以降は全英チャートTOP3入りの常連で、この最新アルバムではついにチャート1位を獲得しました。
リッチ・コスティ(SIGUR ROS、BIFFY CLYRO、MUSEなど)をプロデューサーに迎えた本作は、そのタイトル(“Frank Turner Hard Core”)どおりパンク色を強めた作風の1枚。オープニングを飾る「Non Serviam」はまさにその象徴的な1曲と言えるでしょう。しかし、本作は単にハードコアに攻めるだけではなく、彼が元来持ち合わせているフォーキーな資質も随所から感じ取ることができます。
ハードコア/ポストハードコアというよりは、パンキッシュなガレージロック/ビートロック、あるいは適度にハード&キャッチーなパブロックといった印象の本作。メロディラインもしっかりしており、ハード&ヘヴィすぎないバンドアンサンブルやビート感は非常に大衆性ものと言えるのではないでしょうか。「My Bad」のようなツービートの楽曲や「Punches」みたいなアップチューンも用意されてはいるものの、むしろ本作は「Fatherless」あたりで感じられるビート感とメロディが最大の魅力だと思っています。
かつ、そこに「Miranda」のようなミディアムバラード、「A Wave Across A Bay」や「The Resurrectionists」みたいなフォーキーなナンバーが含まれることで、全体的にも非常にバランス感に優れたロックアルバムに仕上がっている。そういったトータル性の高さが、フランク・ターナーなりのリアルな“ハードコア”なのかもしれませんね。アルバム本編を締め括る「Farewell To My City」のドラマチックな構成と吟遊詩人的なボーカルワークを耳にすると、よりそう実感できるのではないでしょうか。
そして、こんなに筋の通った正真正銘のロックアルバムがナショナルチャートで1位を獲得できるイギリス。まだまだ捨てたもんじゃないなと思いました。
全14曲とボリューミーに感じられるものの、尺的には42分少々と適度な長さなのであっという間に最後まで聴けてしまう。かつ、本作は新曲2曲+アコースティックアレンジ4曲を加えた全20曲入りデラックスエディションも用意されているのですが、こちらはトータルで約65分。本編の曲数が多いだけにボートラは蛇足という気がしないでもないですが、アルバム本編を存分に楽しんだあとに別モノとして接すればそこまで重くないかな。
▼FRANK TURNER『FTHC』
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