BRUCE SPRINGSTEEN『BORN IN THE U.S.A.』(1984)
1984年6月4日にリリースされたブルース・スプリングスティーンの7thアルバム。日本盤は同年6月21日発売。
ギター弾き語り中心で内省的な作風だった前作『NEBRASKA』(1982年)から約2年ぶりの新作。当時、アメリカ位では発売2日で50万枚以上を売り上げ、たった4日でプラチナディスクを獲得。前々作『THE RIVER』(1980年)以来となる全米1位を記録したほか、連続84週トップ10入りを果たすという快挙を成し遂げ、現在までに1700万枚以上を売り上げるメガヒット作に。また、同作からは7曲ものシングルヒットが生まれ、「Dancing In The Dark」(米2位)、「Cover Me」(同7位)、「Born In The U.S.A.」(同9位)、「I'm On FIre」(同6位)、「Glory Days」(同5位)、「I'm Goin' Down」(同9位)、「My Hometown」(同6位)とそのすべてがチャート10位内にランクインしています。
パワフルなビートとファンファーレのようなシンセリフ、象徴的なタイトルをリピートするアルバムタイトルトラックからスタートする本作は、アメリカ人であることを誇りに思い、高らかに宣言する愛国歌……一聴するとそんな誤解をしてしまいがちですが、ここで歌われているのは80年代半ばに入っても依然ベトナム戦争がアメリカ人に及ぼし続ける苦悩について。世の中が好景気に向かう最中、それでも現実はそんなにハッピーばかりじゃない。お前らの幸せのため、アメリカを背負って戦ったのに、そんなアメリカから見捨てられた奴らがいることを忘れんじゃねえぞ……とボスは叫び続けます。
英語を完全に理解しきれていなかった中学生だった自分は、どこか派手な印象で本作を捉えていたところがありました。そこに土着的で翳りのあるアメリカンロック色が加わることで、「ああ、アメリカってこんななんだ」とバカみたいな夢想をしていた。だけど、実際はベトナム戦争はまだまだ日常の中で終わっていない(終われていない)、そういう悪夢から抜け入れていない人たちの日々の困難や、労働者階級者の日常生活における苦しさが、一般市民と同じ目線で歌われている。そんなヘヴィなアルバムなんだってことを、そこからより時間をかけて理解することになるのでした。
シングルカットされた楽曲はどれも素晴らしく、歌詞に関しても年齢を重ねるごとに深みが感じられるようになった(ぜひ対訳にも目を通してほしい)。個人的には「No Surrender」と「Bobby Jean」が大好きで、どちらも離れた友との友情や絆がテーマなのですが、前者はそこにベトナム戦争が絡んでくる。ビターな青春ソングといった印象が強いかな。大人になればなるほど、より沁みる楽曲群です。
のち同郷出身のBON JOVIが『THESE DAYS』(1995年)で、彼ら世代の目線で当時のアメリカおよびアメリカ人の日常を表現しましたが、彼らがそのベースにしたのは間違いなくこのアルバムだと思うんです。それぞれベトナム戦争と湾岸戦争を軸に、ボスは時代が移り変わろうと傷は残り続けることを歌い、ジョン・ボン・ジョヴィは不景気でも前を向くことを忘れちゃいけないと語りかける。80年代と90年代という時代の変化と各ソングライターの手法の違い含め、比較しながら聴いてみるといろいろ気づきがあるかもしれません。
▼BRUCE SPRINGSTEEN『BORN IN THE U.S.A.』
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