STEREOPHONICS『OOCHYA!』(2022)
2022年3月4日にリリースされたSTEREOPHONICSの12thアルバム。
通算7作目の全英1位を獲得した前作『KIND』(2019年)から約2年半ぶりの新作。今年2022年はバンドにとって本格的に音楽活動を開始してから30周年、アルバム『WORD GETS AROUND』(1997年)でデビューしてから25周年という節目のタイミングとあって、本作では音楽的にも原点回帰と言える内容に仕上がっています。
アルバムのプロデュースはメンバーのケリー・ジョーンズ(Vo, G)に、ジム・ロウ(テイラー・スウィフト、グレン・マトロック、THE DANDY WARHOLSなど)&ジョージ・ドラキュリアス(THE BLACK CROWES、PRIMAL SCREAM、REEFなど)という過去の作品群に携わってきた気心知れた布陣で担当。この25年間で彼らが発表してきた名曲の数々を彷彿とさせる、エネルギッシュなギターロックはもちろんのこと、琴線に触れるエモーショナルなバラード、往年のブリティッシュロック/ポップの影響下にある普遍性の強いポップチューンがずらりと並び、全15曲/約64分と非常にボリューミーな形でまとめられています。最近の彼らの作品はどれも40〜45分程度とかなりギュッとした形でしたが、それを考えると今作はアナログ感覚での2枚組作品的なポジションに当たる作品集かもしれませんね。
もともとは20221年に新たなベストアルバムを発表するつもりでいたそうですが、その際にレコーディングされたものの未発表だった楽曲が複数見つかり、そこに触発されどんどん新曲が完成していったとのこと。そうした刺激が功を奏し、気づけば15曲もの良曲が揃い、比較的地味な作風だった前作『KIND』の反動と言える非常にカラフルな楽曲集に仕上がった。かつ、バンド30年の歩みをこの15曲からもしっかり感じ取ることができ、まさに集大成的な1枚(アナログだと2枚組)になったわけです。
アルバム冒頭を飾るストロングスタイルのハードロック「Hanging On Your Hinges」で、掴みは完璧。この生々しさ&荒々しさこそロックンロールそのもので、この曲が本作からのリードシングル第1弾に選出されたのもいかにも彼ららしいですね。かと思えば、続く「Forever」「When You See It」ではいかにもSTEREOPHONICSらしいミドルテンポのメロウなロック/バラードを響かせ、グルーヴィーな第2弾シングル「Do Ya Feel My Love?」では2010年に亡くなった初代ドラマーのスチュアート・ケーブル(Dr)のことを歌ったかのような歌詞に心打たれる。そのあとに、これぞSTEREOPHONICSなミディアムバラード「Right Place Right Time」が並ぶ構成は、アルバム序盤のハイライトではないでしょうか。
アルバム中盤〜後半も緩急に富んだ楽曲群が並び、キャッチーなメジャー感と大人ならではの枯れ具合が適度なバランスで混在。個人的にはピアノとストリングスをフィーチャーしたアコースティックバラード「Every Dog Has Its Day」とタイトなバンドサウンドが心地よいロックナンバー「You're My Soul」、ゴスペル色の強い「All I Have Is You」と続く終盤の流れがツボで、本作のクライマックスと呼んでも過言ではありません。
その後も軽やかなリズムが気持ちよく響くミドルロック「Made A Mess Of Me」、ソウルフル&エモーショナルな名バラード「Seen That Look Before」でさらなる高みを迎え、アンセミックなロックチューン「Don't Know What Ya Got」、アルバムのエピローグにふさわしい2分強のアコースティックナンバー「Jack In A Box」で締めくくり。最初は15曲で64分って長いと感じていたけど、いざ聴いてみるとその完成度の高さと相まってスルスル聴き進めることができました。そういう意味でも、本作は初期のヒット作と肩を並べる重要な1枚ではないでしょうか。
▼STEREOPHONICS『OOCHYA!』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)